月日がたつのは早いねぇ。ことしもあと半年で正月だ、ということで6月に読んだ本。 山極寿一、小川洋子対談「ゴリラの森言葉の海」。いま一番世の中に知られている大学トップの山極氏が作家の小川さんと研究室や屋久島でゴリラや人間社会を語り合う。なかなか面白い。保坂正康著「昭和史の急所」。いま昭和とか平成の回顧物に割とよく手を出している。これはこれまでの著作のなかから抜き書きした安直な内容であった。落合淳思著「漢字の字形」。この新書はなんで手にしたのかなぁ。人が木にもたれているのが「休」という字になったとか、へえという思いを二度三度。 島田雅彦著「人類最年長」。この小説は面白かった。主人公は159歳。万延二年横浜の生まれ。発育が遅く、人よりずいぶん時間をかけて成長した。だから、明治・大正・昭和・平成の4つの時代を生きてきた。こういう設定を島田はよくも思いついたものだ。夏休みの読書にはもってこい。吉行和子著「そしていま、一人になった」。吉行淳之介の妹の和子さんは「どこまで演れば気がすむの」でエッセイスト賞を取ったくらい文章が上手。ただ、これはちょっと歳を感じさせた。 西野智彦著「平成金融史」。何にも分からないまま経済部記者をしてきたのだと大いに反省させられた新書。柳家小三治著「ま・く・ら」。落語本体より面白いといわれた小三治師匠のまくら集。生で聴いたらと面白いだろうな。佐伯一麦著「山海記」。これで「せんがいき」と読む。東日本大震災の記憶とともに作家と思われる男がかつて記録的な豪雨に見舞われた奈良県十津川村への長いバスの旅に出る。バスの中で思いは被災、自死した友人、かつてこの地で蜂起した天誅組の志士たち、あちこちに去来する。このバス路線には一度は乗ってみたいような。 毎日新聞取材班「令和改元の舞台裏」。元号は好きではないが、成立過程には大いに興味がある。門田隆将著「新聞という病」。門田氏はもっといい仕事をするはずなのにこんな内容では。葉室麟「暁天の星」。葉室さんの未完の遺作。取り上げたのは陸奥宗光である。巻末に添えられた長女の文章がなかせる。 |
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