俺のガラケーに仕事の連絡が入ることはまずない。たいていは「あすは空いてますか?」という中国語勉強会の組閣作業のメール、もしくは「今晩なんとかなりません?」という組閣幹事長のせっぱつまった電話だ。 しかし、皆既月食のきょうは違った。誕生祝のメール、電話が朝から立て続けにあった。ありがたいことである。ほんとは手紙の方がうれしいんだけど、それだと「六日のあやめ 十日の菊」になりかねないからなぁ。二日前にもお祝いの葉書もいただき、きょうもジャストでいただいたのもあるのだが、メールはその日に届くから、間違いない。 朝の6時半にいただいたメールは30年来の知り合いの美女からで、老親の介護などこれあり、直接お祝いができないがおめでとうというものだった。で、「暖かくなったら一献」とお返事した。 驚いたのは栃木の新聞社の初年兵の女性記者からのモノで、俺がよく行っていたお花屋さんに取材に行き、俺のことが話題になったらしく「土地に溶け込んでおられたのに感心しました。おめでとうございます」という内容だった。彼女に誕生日を教えたかなぁ?それで「人間は変わるものだけど、誕生日は変わらない。お祝いされてイヤな気持ちになる奴はいないから、これからの仕事で何人の誕生日を知ることができるかな」ってな返信をした。 午後にいただいたメールは、この四半世紀、お互いの誕生日にメシを食べている釣り好きの社長夫人からで、来週会食する約束になっている。焼き鳥がいいか蕎麦がいいかというのを、お祝いを兼ねて誕生日当日に尋ねてくるまことにプロの仕業である。で、焼き鳥を所望と連絡した。 夕方かかってきた電話は、俺が4年間ホームベースにしていた宇都宮一の高級居酒屋のママからのもの。正月明けに芝刈り大会のため前日から乗り込み、鬼瓦会長などとワーワーやった。そのお礼というので、「あの時は俺は一銭も払わなかったけど、翌日のゴルフでしこたま取られた」なぞの話をした。元気そうでよかった。 さっき知り合いとの会食を済ませ帰ってきたばかりだが、そこではデザートの時にロウソクを吹き消すシーンもあった。あれ、照れるもんだね。いったん家の中に入ったが、皆既月食になるというニュースに寒い表に出て、うすぼんやりした月を見た。この年になるとさほどの感懐もわかぬが、悪い日ではなかった。 |
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