タッチの差で金曜日中につぶやけなかった。
「万引き」と聞いて一番に思い出すのは、駆け出し福島支局の3年生の頃。裁判所とか地方検察庁を持つ司法担当で、ある朝、地元紙の「福島民報」を寝ぼけ眼で見ていたら、社会面の真ん中あたりにどこかで見たような中年のおじさんの顔写真が載っていた。あれ、誰だっけなぁと思いつつ、見出しが目に入った。 「裁判長 万引き」。どっひゃー、福島地裁刑事部のS裁判長ではないか。スーパーでシャンプーかなんかの日用品数千円相当を万引きしたとある。こりゃ、夕刊で追いかけねば。人を裁くのが仕事の裁判官が万引きなんぞをしてはいかん。裁判官の顔写真が「司法大鑑」という特殊な本に載っていることを初めて知った。新聞社内には裁判官の手持ち顔写真はないのである。 木曜日、カンヌ国際映画祭で最高賞の「パルム・ドール」を取った是枝裕和監督の「万引き家族」を立川のシネマシティーで観た。平日の午後2時台というのに客席はほぼ満席。当然だが年配者が多い。ていねいな作りで子役の演技が素晴らしいのだが、これがパルム・ドールかなという思いを禁じえなかった。 俺なんかの世代には、映画はテレビではやれない大スペクタクルという思いがある。疑似家族の情感を描いたこの作品はどうしても”ちまちまとした世界”と映ってしまうのだ。「万引き家族」が最高賞に選ばれる時代なのかなとも思った。 是枝作品は「歩いても 歩いても」(08年)とか「海街dairy」(15年)など割と観ている方で、パルム・ドールというから、観ているこっちの肩に力が入りすぎたのかもしれない。悪かぁないのだが、絶対のお勧めという訳ではない。 子役に加え、朝ドラ「あまちゃん」で発見し、テレビドラマ「水族館ガール」で贔屓になった松岡茉優がよかったねぇ。あれでけっこうボインなのだった。 |
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