同居中の長女から「父の日のプレゼントは何がいい？」と言われたのは１週間ほど前のことである。長女は故あって３月末、高校養護教諭の職を辞したばかり。塾講師のアルバイトに転じたが、”夜の商売”だから、以前のようなまとまった稼ぎがあるわけではない。
で、「お金もそうないだろうから、ことしはいいよ」と言ったのだが、「退職金を予想以上にいただいたから」と譲らない。それで「この年になると、欲しいモノがそうないんだよね……。そうだ、良い靴下がいいかな」。５、６年前の父の日プレゼントで立川・伊勢丹で買ってもらった靴下が、しっかりした作りのためか何度も履いているのにゴムが緩まず非常に快適で、昨年求めた緑色のスニーカーを履く時の薄手の靴下にロクなものがないことを思い出したのだ。それに夏用の紺色の背広を着用する際の、紺系統の靴下がだいぶよれてきていた。
で、昨日昼前、二人で立川の伊勢丹に出撃した。この店では流通業界を担当していた四半世紀前からの知り合いの美女が、統括マネジャーをしていたが、この春の異動でエステ関係の関連会社に出向してしまった。まぁ、靴下ごときで彼女の手を煩わせることもない。
５階の紳士用品売り場に行くと、帽子とか扇子とカ双眼鏡の脇ににぎにぎしく「父の日プレゼント」の張り紙が掲げられている。そんなものには目もくれず、一直線に靴下の棚へ進み、スニーカー用の白っぽいのを３足、紺色２足、ベージュ色１足を選び、籠に入れ「はい、お願いします」。男の買い物は早いのだ。
スニーカー用の白い靴下は少々お高く、水玉、ストライプなどの柄でお出かけがしたくなる気分になるものばかり。良いプレゼントをもらった。で、タバコの吸えるエクセルシオールに長女を連れて行き、塾講師の仕事の状況を少々尋ねた。英国数だけでなく、物理化学も教えるのだと聞き、たまげた。
”夜の商売”は１日最大３コマ（１コマ90分）で、まだ時給は低いが、俺と違って昇給もあるとか。間もなく始まる夏休みは稼ぎ時というから、靴下６足くらいはいただいておいていいかな、と一人納得したのだった。
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