土曜日夜は読書感想文の添削をたのまれている某団体の学生寮に出張り、90分の授業をぶちかましてきた。春秋シーズンを中心に年間6冊の課題図書を指定し、その読書感想文を書いてもらうほかに、年間2回読書講座をたのまれているのだ。 もう10年も続けており、今年度の俺の受け持ちは大学5年生2人(1年間留学したため)と1年生16人(当初は20人いた)。5年生とは長い付き合いだから、2人の性格もものの考え方も分かるが、1年生は昨年5月に初顔合わせ。あとは月1回提出される感想文でつながっているだけ。顔と名前が一致しなければ学生を教えることなどとうていできないと思っているので、今回の授業は出席を取る時に、これまで見た感想文の記述を基に少々対話して、コミュニケーションを図ることにした。 学生たちは大学も専攻もまちまち。共通しているのは父親を早くに亡くしていることだけ。こういう子たちに授業するのはなかなか大変なのだ。例えば美大で染色をやっている女子には「志村ふくみの『一色一生』って知ってる?すごくいい本だから読んでみな」。韓国語に興味を持っているという男の子には「ちょっと前に出てきて白板にハングルで自分の名前を書いてみな」。その子が覚えたてのハングルを書くと「ハングルは規則性のはっきりした表記だから、自分の名前くらい俺でも書けるんだよ」。 昨夏アフリカのウガンダに短期留学した学生が4人いたので「行ってみてよかったでしょ。外国を見て、変わった自分について話してみて」。この出席確認だけで30分かかった。 それから後ろの方にいた5年生2人を前に出させ「社会に出たら常に優先順位を考えて行動するように」と訓示。「チコちゃんに叱られる」の話題もとりまぜて話したが、この学生寮ではテレビ視聴禁止なので、あまり受けなかった。で、「俺はここへ来るたびにテレビも見ないようでは世の中のことが分からない、と言い続けているんだが……。いい番組もあるんだが」。 肝心の読書については「波長の合う作家に出会ったら、その人の作品を全部読むようにするといい」。これで90分。この90分のために京大式カード15枚のメモを前夜から4時間かけて作ったのだ。いつも大学で講義しているセンセはどれほどの準備をしているのかね。 |
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