「一月は去る」「二月は逃げる」という。立春もはや過ぎた。あとは来年を待つばかりか。ということで1月に読んだ本。 新年1冊目は辻原登著「不意打ち」。おとといの毎日に大書評が出ていたが、辻原の新境地の小説短編集。実際に起きたような事件をヒントに、人間の行為の不可思議さを綴る。辻原の小説は割と波長があう。面白かった。斎藤美奈子著「日本の同時代小説」。岩波新書にこういう本も出てくる。ちょうど俺なんかが読んできた小説がもろもろ紹介されている。読んでこなかった作家の本も。文学好きの年寄にはぴったりの内容。 鈴木智彦著「ヤクザとサカナ」。ヤクザが密漁に係わっている実態をルポした。著者はヤクザに詳しい書き手だが、ちょっと文章が荒い感じがした。北方領土近い漁場では漁師もヤクザを頼らざるをえなかったんだろうな。重松清著「エイジ」。東京郊外の中学2年生の主人公がエイジ。街では連続通り魔事件が発生して犯行は次第にエスカレート。ついに捕まった犯人はエイジの同級生だった。自分もいつかキレしまうのかと思いつつ生きる少年の日常が描かれている佳品。読書感想文の課題図書に出すつもり。 大崎善生著「聖の青春」。将棋の羽生元名人がデビューしたころ、ネフローゼという重い病気を抱えながら将棋に打ち込む村山聖という男がいた。その村山のひたむきな生涯を将棋の世界に詳しい著者がノンフィクションにした。ぐいぐい読ませる。相沢冬樹著「安倍官邸vsNHK」。森友事件をスクープしたNHK大阪放送局の司法記者が安倍への忖度から異動を命ぜられ、NHKを辞めることになった。その顛末を記した本だが、看板に少々偽りがあって、官邸対NHKのタイトルはちょっと。しかし、辞めては続報が打てないではないか。 菊池正史著「影の総理と呼ばれた男」。昨年没した野中広務の政治信念を記録した元番記者の新書。かつては野中のような戦争を二度と起こしてはならないという信念を持った政治家がいたのだ。辻原登・長谷川櫂・永田和宏著「歌仙はすごい」。3人が計8回にわたって巻いた歌仙の一部始終。面白い。舘神龍彦著「手帳と日本人」。こういうタイトルに弱いのです。原田マハ著「常設展示室」。アートに関する短編集。30日につぶやいた。 |
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