あっと言う間に2月は逃げ、はや去るの3月。年々月日のたつのが速くなる。ということで2月に読んだ本。 北方謙三著「チンギス記一 火眼」。北方は「大水滸伝」のあと何を書くのかと思っていたら、チンギスハンに行った。その第1巻、まだ十代のテムジンが旅をするところから物語は始まる。北方の語りっぷりは好もしい。先日北方の講演を聞いたが、彼は羊の血液を一滴もこぼさず1頭さばいたとか。そんなシーンも出てくる。磯田道史著「日本史の歴史探偵」。磯田の文章は非常に分かりやすく、なるほどと思わせる。中世の武士と江戸の武士の違い、秀吉の処世術の極意などずいぶんとためになる内容。歴史探偵とは昭和史探偵の半藤一利さんの後を継ごうという心か。 門井慶喜著「家康、江戸を建てる」。「銀河鉄道の父」で18年に直木賞を受賞した門井氏の江戸物語。俺は宮沢賢治は苦手なので受賞作はあまりピンとこなかったが、この本は楽しめた。この正月2夜にわたってNHKがドラマ化して読みやすかったこともある。阿刀田高著「老いてこそユーモア」。このところ、”老いて”とか”老後”とかのタイトルの本に手が伸びるようになった。自分が年をとったからだろう。内容はそうたいしたことはない。 後藤正治著「拗ね者たらん」。拗ね者でピンと来た人は本田靖春の「我、拗ね者として生涯を閉ず」を読んでいる人かも。「不当逮捕」「誘拐」の名ノンフィクションをものした元読売新聞記者、本田。その作品を紹介しながら、数奇な生涯を追った。後藤氏も名文家だから、すらすらと読める。「不当逮捕」は読ませたねぇ。 井上荒野著「あちらにいる鬼」。荒野は作家、井上光晴の長女で08年に「切羽へ」で直木賞を取った。その荒野が5歳の時、光晴と瀬戸内晴美(現寂聴)が恋に落ちた。父とその不倫相手、そして母をモデルに小説に仕立てたのがこの本。90歳を超えもうなにも怖いもののない寂聴さんが「モデルに書かれた私が読み、傑作だと感動した本」と帯にある。小説家はすごいねぇ。この母というのがなかなか魅力的に描かれている。井上の死後、瀬戸内と母は連絡を取り合っていた。駆け出しの福島支局で寂聴さんの出家を取材した学芸部の記者が支局から原稿を送るところに行き合わせたことがあった。あれから何年たつのか。 本川達雄著「生きものとはなにか」。名著「ゾウの時間 ネズミの時間」や「生物学的文明論」の著者が若い人向けに生物とはなにかを説いた。本川氏はナマコの研究を続けてきた浮世離れした学者で、あくせく生きるなと主張し続けている人。一番印象に残ったのは「生物は円柱形」という言葉だ。 -----------------------------7e3e5202049c Content-Disposition: form-data; name="image"
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