この2、3日涼しくなったと喜んでいたが今日の日差しはきつい。世の中甘くないということで8月に読んだ本。 高田郁著「銀二貫」。「みをつくし料理帖」の高田さん。大阪の寒天問屋に銀二貫で助けられた松吉が新しい寒天作りに挑むお話。手慣れた筆で読後感はすこぶる良い。高村薫著「我らが少女A」。毎日新聞に連載された小説。舞台が東小金井周辺。ガキの頃よく遊んでいた野川の辺りが登場するので親しみやすかった。保坂正康著「昭和の怪物七つの謎」。最近この手の第二次世界大戦あたりを扱った本(新書)を手にすることが多いのは何故か。 原田マハ著「美しき愚かものたちのタブロー」。国立西洋美術館誕生に功績のあった実業家、松方幸次郎と松方コレクションが戦後どのように日本に取り戻されたかを史実に基づき書かれた小説。マハさんの著作では「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」などの方が面白い。宮下奈都著「羊と鋼の森」。16年の本屋大賞受賞作。本屋大賞はこれまで全部読んできたが、調律師を取り上げている作品に腰が引けていた。夏にOB訪問に来たバドミントン部の後輩の子がよかったというので、読む気になった。悪くはないが……。 高田郁著「あきない世傳 源流篇」「同 早瀬篇」「同 奔流篇」「同 貫流篇」「同 転流篇」「同 本流篇」「同 碧流篇」。この文庫本7巻を8日で読み通した。貧しい学者の家に生まれた幸が、縁あって大阪天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に出、お家はんに可愛がられ、商いを覚える。四代目の妻となり、急死した四代目の弟の嫁となり、出奔してしまった五代目の後を継いだ弟の妻となり、六代目の急死のあと、七代目店主となった幸が、亡き夫の夢だった江戸進出を果たすまでの工夫苦労が、呉服にまったく縁のない俺にもとても興味深く読めた。続編が待ち遠しい。 内田樹著「そのうちなんとかなるだろう」。「『おじさん』的思考」のころから読んできた内田のハチャメチャ人生が綴られている。面白かった。奥田英朗著「罪の轍」。このミステリーはなかなか読みでがあった。舞台は昭和39年。オリンピックの直前の東京の下町だ。週刊文春編「私の大往生」。理想の死の形をナベツネなど14人が語る。インタビューから6年後に亡くなった俳人、金子兜太の項がよかった。 |
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