隠居志願のつぶやき2017

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...... 2020年05月01日 の日記 ......
■ 旅の思い出   [ NO. 2020050101-1 ]
 栃木の新聞社に勤めていた3年前までは、週末お袋の見舞いと生物学学習のため、西国に戻っていた。月曜朝、西国駅で7時40分のむさしの号に乗ると武蔵野線を通って30分ちょっとで大宮に着く。そこから東北新幹線で宇都宮へ25分。十分通勤が可能だが、宇都宮に居住することが赴任の条件だった。その新幹線の車内で楽しみにしていたのが、JR東日本が発行し座席に備え付けてあった雑誌「トランヴェール」。沢木耕太郎の巻頭エッセイ「旅のつばくろ」というのが、なんともいい文章で波長が合ったのだ。
 「テロルの決算」(79年)で世に出、あの「深夜特急」三部作で大評判を取った作家。その長年書き綴った2000字ほどの「旅のつばくろ」の中から佳品をまとめた本が新潮社から刊行された。昨夜読了し、若いころ行った俺の旅の日が急によみがえった。
 あとがきに沢木は、16歳の時、周遊券を使って東北を12日間旅した。所持金は3000円。それが旅の初めと書く。本文の中にも「長じてからも旅では自分はケチになり、めったにタクシーには乗らない」とか「花巻駅の駅舎で夜明かしをするなど、大方は車中泊だったが、駅舎で朝を迎えたことが3日あった」というのがあった。その花巻駅を再訪した経緯も「旅のつばくろ」に出てくる。
 俺もあれは高二の夏か。仲間6人で周遊券を使って東北一周をしたことがあった。所持金は2万円ほど。周遊券では特急には乗れないが、急行はオーケーで、車中泊が多く、テントに泊まったことが多かった。俺が一番見たかったのが大舘のストーンサークル。思いのほか小さかった。メシを炊いておにぎりにし、それに入れたマグロのフレークがとてつもなく不味く、押し付けあった記憶がある。岩手の海岸線をバスで北上していた時、乗客のお嫁さんらしき女性がビニル袋に嘔吐しているのを目撃し、貧しさを実感したのだった。30年後に赴任することになる秋田では竿灯まつりの最中だったが、ロクに見なかったなぁ。
 沢木の本を読んでいたら、若き日の一人旅のことが次々に思い出され、ステイホームの生活でつぶやくネタの苦労する毎日だが、旅の思い出をものすのもいいかなと思えてきた。沢木と同様、旅は一人旅に限るのだ。

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