NHK月曜夜の「鶴瓶の家族に乾杯」をよく見ている。見知らぬ土地をアポなしで訪れ、出会った人を和ませてしまう鶴瓶のコミュニケーション能力にいつもうなってしまう。人間、誰しも自分をわかってもらいたい存在だが、慎みというものがあるから自らしゃしゃり出るということをしない。その蓋を鶴瓶は一声で開けてしまう。たいしたもんだ。 この前の月曜は、大河ドラマ「麒麟が来る」で信長の妻、帰蝶役の川口春奈と明智光秀ゆかりの岐阜県山県市を訪れた。山県市なんて地名、初めて知った。沼尻エリカの代打で帰蝶をやっている春奈ちゃんはなかなか雰囲気が出ている。沼尻のシーンを撮り直したようだが、これは正しい判断だったと思う。長崎県は五島列島の田舎育ちだが、ああいう目鼻立ちのいい娘が生まれるんだね。モデル出身でキャリアはもう十年以上になるとのことだが、俺が春奈ちゃんを知ったのはこの大河が初めて。 鶴瓶はぶっつけ本番旅に「大丈夫かな」と不安を隠さない春奈ちゃんに、2番目に出会った家族から教わったハヤシライスの店と黒にんにくハンバーガーの店に行ったらいいと指示する。田舎町だから、道でばったり人に会うことなど稀なのだ。 俺がこの山県市の旅で驚いたのは、鶴瓶が通りかかった手入れの良い庭を見て感心し、「ええ庭でんな」と奥さんに声を掛け「あら、鶴瓶さんだ」と招き入れられた池田さんちでのこと。「お父さんは?」と尋ねると「一日中パジャマ着てます」の答えに「パジャマ男、出てきてぇな」とお願いし、ジーパン姿で出てきたさもない風情のおじさんに「もう、仕事はしてないんですか?」と声を掛けたら「物書きしてます」の答え。こんなところで小説家に会うかと言った相手が池永陽氏だったことだ。俺は池永氏の顔は知らなかったのだ。 池永陽といえば、NHKで6年前放送したドラマ「珈琲屋の人々」の原作者。「珈琲屋の人々」(三部作)は俺の好きな小説で、おととしには「下町やぶさか診療所」を俺の本のベストテンに選んでいる。「雲を斬る」とか「用心棒日暮し剣」などの時代モノも、そこはかとなく漂うユーモアが好もしく、作品のほとんどを読んできた作家なのだ。 さすがの鶴瓶もこれにはびっくりした様子で、「ドラマ化の時は、わき役でもなんでも使ってください」と話した。あとでググってみたら、このドラマ「珈琲屋の人々」(全5話)が31日からBSで再放送されることを知った。それで池永邸立ち寄りは、ぶっつけ本番ではなかったのではないか、と勘ぐっているのだ。
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