作家、椎名誠や書評家の目黒考二(別名・北上次郎)が創立した「本の雑誌社」の社訓が「酒と家庭は読書の敵だ」と聞いたことがある。実際、目黒の「笹塚日記」には、平日は全く家に帰らず会社のソファで寝ていて、週末洗濯物をかかえて町田だったかの自宅に帰る目黒の姿がよく出ていた。 ふだんは酒がなくても全く問題のない俺だが、6月は送別会の連チャンで、まるで酒がいけない口ではないので、毎日のようにアルコールを口にしていた。加えて引っ越しのための荷造り、きれいにして引き渡すためのお掃除や西国に移ってからの荷解きに時間を要したため、必然として本が読めず、6月に読めたのはこの20年では一番少ない3冊のみだった。 先週末、宇都宮のマンションの管理不動産屋から届いた書類によると、5−6月の水道料金が4800両、畳替えやタバコによる壁紙の交換費用、洗面所のユニットの取り換え費用が締めて15万5200両で計16万両。二か月分の敷金16万両と同額で、還付も追加徴収もなしとのことだった。 こりゃ、どう考えても帳尻合わせの数字としか思えないが、おかしいのではと問い合わせるのも手間がかかる。4年前宇都宮に行った時の不動産屋の書類をひっちゃぶき、すっぱりこれっきりにすることにした。 で、6月に読んだ3冊の本は、まず原田マハ著「マグダラ屋のマリア」。死のうと思ってたどり着いた「尽果(つきはて)」という岬にある食堂の女主人は、マリアと呼ばれる左手の薬指の先がない不思議な女だった。マグダラのマリアってキリスト教に出てくるよね。じんわり来るよいお話でした。マハさんの文章は波長が合う。 佐藤亜紀著「スウィングしなけりゃ意味がない」。舞台はナチス政権下のドイツ。ハンブルグでは夜ごと敵性音楽のジャズに興ずる若者たちがいた。次女に勧められた本だが、あちゃらモノは登場人物の名前が覚えづらく面白そうなんだけどけっこう読むのに時間がかかった。 稲垣えみ子著「寂しい生活」。朝日新聞社編集委員を辞め、節電を徹底し掃除機、レンジ、テレビ、冷蔵庫まで捨てたアフロヘアのおばさんが電気代月額150円の生活が楽しいと思うに至った哲学を語る。引っ越し後、断捨離に急に目覚めたのは多分に、このものすごい大学の 後輩に影響されているなぁ。 これで17年上半期に読んだ本は49冊。もう無職ゼンコーなんだから数を追うのは止めてしみじみとする本をゆっくり読んで行こうね。 |
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