メンタルを病んでいる4つ下の弟はこの四半世紀、労働による収入がない。1年半前93歳で亡くなったお袋が存命中は、小金井の実家でメシ、センタク、ソウジのすべてをお袋に面倒をみてもらっていた。20年以上前に亡くなったオヤジが残した弟名義の西国のマンションを他人に貸して、その賃料を生活費の一部に充てていた。お袋が倒れ、施設に入る前の半年ほどを弟が実家でお袋の面倒を見たのは、今から思えばヘルパーさんの助けがあったとはいえ、奇跡的なことではあった。 お袋が亡くなって以降、弟はウツがひどくなり、コンビニに食材を買いに出るほかは、ほとんど外に出られなくなった。小金井の実家に位牌を置いているため、俺が餃子の都から上京して線香を上げに行こうと思っても、この6月までは「週末は配慮せられたし」のメールが来る。要するに来るな、ということである。人と話をするのもつらいのだろう。それで新盆と一周忌の時ぐらいしか線香を上げられなかった。 その弟がソウに転じたのはこの7月初めである。固定資産税を払うため、メンタルの団体の施設長、Fさん(この女性にはお袋の入院、葬儀の時にはひとかたならぬ世話になった)に預けてある預金通帳を見たところ、予想以上に残高があったので、急に元気が出たとのことである。とはいえ、ソウ状態になると見境なく消費活動を行うので、ウツより怖いところがある。 このお盆に線香を上げに行ったところ、1年半手を入れなかった実家の庭は、梅の木とか雑草が生い茂り、お化け屋敷のようになっていた。さすがにと思ったのか、弟がFさんの知り合いの庭師に頼んで先週かなり枝葉を切りすっきりした。きのうその庭を見に行き、弟が「費用は折半にしようか」と言うので、「俺が持つ」と言い放った。小金井の実家の所有権はお袋の死後、俺が持っているのだ。西国のマンションの家賃は弟が年金支給開始の65歳になるまでは俺が支払う約束をしている。 弟がソウのうちにやるべき次のテーマはお袋の遺品処分である。きょう庭師に払う18万両を弟に届けに行った際、10月の連休にやってしまおうと話をつけた。庭よりも遺品整理はコストがかかると聞いている。その覚悟はできているのだが、お袋の居室だけでなく小金井の実家(2階家)のすべての部屋は、衣類や本などで弟がぐちゃぐちゃにしており、床が見えない状態なのである。 本日、少しは片づける気があることが分かり、胸をなでおろしてはいるのだが、かつて俺の書斎だった部屋の本棚の中身が散乱しているのを見ると、病がなせる業とはいえ、ほんとうは腹が煮えくり返る思いなのだ。
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