総選挙前日の土曜日は悦ちゃんが地主の八王子のゴルフ場で、同期生による2組の芝刈りだった。京都在住のKくんが3年ぶりに参加するというのに、先週はずっと雨。当日も朝から雨が予想されたが、誰も「止めないの?」と連絡してこない。 で、立川駅南口で午前7時のクラブバスに乗ったら、下北沢の長男の家に泊まったというKくん、同じ校閲のアルバイトをしているMくん、昨年竹橋の新聞社の監査役を退き悠々自適のSくん、竹橋の印刷子会社の役員をしているOくんと一緒になった。遠路参加のKくんの手前、誰も「止めよう」と言わない。 Kくんは悦ちゃんらと1組目。俺は2組目。1ホール目のミドル。2打目が右にそれ高さ10bの斜面の上の平らな所に。こりゃ、クラブを替えないとと斜面をそろそろと降りようとしたら、スピードがついて止まらない。下も滑る。こりゃ、やばい!と斜面が終わるあたりでとっさに頭からダイブした。腹がブレーキ役となり、メガネの鼻にかかるところが少し曲がったくらいで、事なきをえた。 このホール、鉄ボギー。Sくんは10bの金パットを決めボギー。悪天候でオリンピックはやらないことにしたが、こんな時の限ってパットが入る。3ホールを終わって、俺は金が入れば一気通貫。Sくんも銅が入れば一通である。 雨は止む気配がない。4ホール目のミドルに行くと、前の組の悦ちゃんが100bほど先で何か叫んでいる。足もとに人が倒れている。駆けつけるとKくんが顔を血だらけにしていて、意識がない。Mくんが右斜面に打ったボールを探しに行ってあげ、高さ5bほどの斜面を滑り落ち、頭から大地に倒れ込んだらしい。意識は3分ほどで戻ったが、Kくんはキョトンとしている。同じ組のOくんが119番。悦ちゃんに「中止にしよう」と伝えた。 昭島市内の病院には悦ちゃんとOくんが付き添ってくれた。俺らはゴルフ場のレストランで彼らの帰りを待つことにした。Kくんと一緒に上京した奥さん、長男とも連絡が取れたが、自分がなぜゴルフ場にいたかも分からない状況という。とんでもないことになった。 きのう午後になり、一晩病院に入院したKくんから「ご心配をかけました。ようやくゴルフ以外の記憶は戻りました。みんなに『Kは不死身』と伝えて」とメールが来てホッとした。年2回の同期コンペではスタート前に記念写真を撮るのだが、本日「遺影にならなくてよかった」の添え書きをして発送したところだ。 若いころのようには体が動かなくなっているのだから、斜面と女のため息には気を付けねば。自己都合でラウンドを止めたのだから、通常ならプレー代は取られるところだが、悦ちゃんの顔でか「お代はいただきません。また来てください」。タダで3ホールを練習し、初のダイブも経験できたのである。
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