火曜日のお休みに上野の山に出張った。お目当ては東京国立博物館で開かれている興福寺中金堂再建記念の「運慶」展である。中学・高校の修学旅行が京都・奈良だった俺は、中で阿修羅像のある興福寺が贔屓で、今回東大寺南大門の金剛力士像の作者、運慶が造った無着菩薩立像が出展されている。 高橋美鈴アナが出ているNHKの「日曜美術館」でもこの運慶展をこの前取り上げていて、中高のころは知らなかったこともたくさんあった。奈良にはそう行く機会がないので、この機会を逃すと死ぬまで拝めないかもしれない。午前中洗濯などの家事を済ませ、西国‐新宿の定期を活用して、上野に着いたのは午後3時である。 東博に入ると30分待ちの看板が出ていた。平日なのに人気だ。正面の東博のシンボル、樹齢130年を誇る高さ32bのユリノキが黄色に色づいている。見事なものである。昼をまだ食べていなかったことを思い出し、構内のトラックの出店で肉うどんを食した。けっこういける。 うどんが効いて10分ほど並んで入れた。この展示の素晴らしいのは、展示品のかなり近くで、それも正面からだけでなく、背面からも鑑賞できることだ。たいがいの作品に水晶の玉眼がはめ込まれている。初めて見た和歌山県・金剛峯寺の八大童子立像が可愛らしい。 さて、お目当ての興福寺北円堂内を模した部屋に、無着菩薩・世親菩薩立像は四天王に囲まれて静かに立っていた。圧倒的な質感。無着さんの滋味あふれる表情がたまらなくいい。50年ぶりの対面である。世親菩薩も近くから観ると悪くない。中東生まれのようなお顔である。康弁作の龍灯鬼立像のユーモラスな形も見ごたえがあった。 いったん展示室を出て絵葉書を求めてからも、もう一度会場を回って、無着菩薩の周りを一周した。こんな経験はあまりない。外に出ると5時。ユリノキの下で暗くなりかかっている空を見上げた。モーレツにタバコが吸いたくなった。 で、上野の山を来た時とは逆方向に進み、谷中方面に。芸大の脇を通って歴史のあるカヤバコーヒー店で一服し「谷根千」の本に目を通した。古い町並みをぶらぶら。墓地を抜けて日暮里の駅まで歩いたのでした。 |
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