6月まで在籍していた栃木の新聞の主筆の誕生日が7月31日だったので、彼の誕生祝いを口実に「土用丑の日」のうなぎを彼と一緒に食べていた。近頃はお高いうなぎだが、実家がうなぎの名店という美人イラストレーターからは、この6月退職祝いにうなぎづくしの豪華家庭料理をゴチになった。 年に1回食べられればいいうなぎだが、この前国分寺の中華料理「秀永」への道筋にあるうなぎ屋に「うなぎは冬こそうまい」の看板が掛けられているのを見て、モーレツにうなぎが食べたくなった。「土用丑の日」は夏場に売り上げが落ちるうなぎ屋のために、平賀源内先生が考案したコピーとの説もある。 どうせ食うならと、うなぎ大好きのマッサージの力持ち美人に、日頃の生活指導のお礼にご馳走することにした。男にとって、女は悲しみを半分に、喜びを2倍に、費用を3倍にしてくれるのである。 西国あたりでうなぎの名店といえば、小説家、山口瞳が贔屓にしていた国立「押田」かと思ったが、太宰治が好んだ三鷹の「若松屋」と言うのが、国分寺の南口に引っ越してきたという話を物知りの知人が教えてくれた。で、金曜日の夜、「若松屋」に乗り込みました。太宰ファンの芥川賞作家でコメディアンの又吉直樹の写真や色紙がそこらじゅうにかかっている。 ドーンと「大串」を頼もうかと思っていたら、力持ち美人は「食べきれそうにないから『中串』でいい」と言う。卵焼きなんぞをつまんで、熱燗でやっていると来ました来ましたうな重。「中串」でも十分である。山椒をかけていただきます。 美女を借景にして食ううな重はうまい。力持ち美人に言わせるとうなぎの焼き加減が「押田」よりふっくらしていて好みでおいしかったとのことである。「大串」と思っていたので予算が少々浮いた。で、国分寺駅中の花屋さんで美人にバラをプレゼントすることにした。黄色いバラが好きと聞いていたので「これなんかどう?」と言ったら「最近、好みが変わったの」とピンクピンクしたバラを選んだ。なかなかいい宵だった。 |
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