新聞社を辞め7月から週3回校閲の小銭稼ぎに出ているが、実は8年前からやっている小銭稼ぎのアルバイトがある。ある団体に頼まれ、所属する大学生を対象に読書感想文の課題図書の選定と添削をしているのだ。毎月末、翌月の課題図書を連絡する。今の受け持ちは4年生。4年前にこの学年がスタートした時は15人ほどいた学生も一人減り二人減り、今は3人になったが、本を選ぶエネルギーは変わらない。先日12月の課題図書として3年前「破門」で直木賞を取った黒川博行の「蒼煌」と連絡したところだ。 俺は毎日新聞が主催している「読書感想文コンクール」(全国400万人の児童生徒が参加)が本嫌いを生む大きな原因と思っている阿呆だが、本はうまくはまれば非常に面白く、読まないより読んだ方が断然いい。それで、課題図書を決める際には可能な限りオモロイ本を選び、それを読んで友達に「これ、オモロイで」と勧める感じで感想文を書いてもらいたいと考えている。それならば、読書感想文がイヤで本嫌いになることはない。 さらに学生にはいろいろな作家を知ってほしいという思いから、同じ作家の本は選ばないようにしているのだが、今の学年では奥田英朗がダブってしまった。まぁ、こういう時もある。 今の4年生に1年の時から読んでもらってきたのは[1年]奥田英朗「真夜中のマーチ」本川達雄「ゾウの時間ネズミの時間」佐藤多佳子「一瞬の風になれ」鎌田實「○に近い△を生きる」藤沢周平「蝉しぐれ」中根千恵「タテ社会の人間関係」[2年]三浦しをん「舟を編む」山本一力「だいこん」奥田「オリンピックの身代金」雫井修介「クローズド・ノート」川上未映子「ヘヴン」磯田道史「歴史の愉しみ方」 [3年]金城一紀「GO」冲方丁「天地明察」米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法」藻谷浩介「デフレの正体」葉室麟「蜩ノ記」高野和明「ジェノサイド」[4年]原田マハ「楽園のカンヴァス」金成隆一「ルポ・トランプ王国」横山秀夫「64」宇江佐真理「斬られ権左」のラインナップである。 8年前に最初に受け持った学年が卒業した時に、記録文集に「大学生活で一番感動した本」として、俺が課題図書にした「蜩ノ記」と「ジェノサイド」を挙げた女子がおり、このアルバイトをしていてよかったと思ったのだった。 |
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