290通の年賀状の宛名を筆ペンで書くお習字の勉強はきのう終わった。あとは一筆添えて投函するだけ。例年よりペースは早い。しかし、正月までにやらねばならない作業はまだちょっとある。 大掃除はもちろんだが、30年来使っている黒革の手帳のまだ空欄の見開きマンスリーページの後ろにある12ページほどの余白のところに、気の利いた言葉やなるほどと思って書き留めた言葉、記者取材の要点などを書き写す年末恒例の行事があるのだ。 マスコミ志望の学生相手の文章教室や読書講座で、これを開いて若い衆をケムに巻く言葉が並んでいる。まず、最初のページがこの30年に読んだ本の中から、飛び切り面白くて人にも薦められる本のリストだ。70冊ほどの書名が書いてあり、この10年はその年に読んだ本のベスト5が並んでいる。 次のページはお世話になった方からいただいた名言が並んでいる。その冒頭にあるのが、日銀キャップの時、日経に新聞協会賞のネタを抜かれてダウンした直後、当時の三重野康日銀総裁にいただいた「窮して困(苦し)まず 憂いて意(こころ)衰えず」という「荀子」にある言葉だ。この時いただいたメモ用紙はまだ、この手帳の奥に挟み込んである。 この名言集は毎年数項目が書き足されている。いつもの年末には、前年の手帳を横に並べ、そのままの順で書き写していたが、リタイアしたことでもあり、来年用には大幅に順番を入れ換え、もういいかなという言葉は省こうかと思っている。今年覚えた「年をとったら教育と教養が大切」のフレーズなどは前の方に記入することになるか。 12ページ分をコピーして新年の手帳に張り付けてしまえば簡単なのだが、一字一句書き写すことで、血となり肉となると思っている阿呆なのである。 |
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