有馬もダメ、ことしG1に昇格したレースもホープレスに終わったのでは今年の本のベストテンをぶちかますしかないではないか。昨日までに読んだのは112冊。大半が新刊だが、文庫化された数年前の作品もある。一昨年の宇江佐真理さんに続き、年末、贔屓の葉室麟氏が亡くなるショッキングな出来事があった。藤沢周平さんの衣鉢を継ぐ二人の新作が読めなくなってしまったのは残念でならない。 年末、毎日新聞の読書欄で40人ほどの各界の書評子が「ことしの3冊」というのをやっていた。中島岳志という政治学者が「笑福亭鶴瓶論」と「自民党―一強の実像」を挙げていた。この2冊は読んでおり、他の人の3冊はほとんど無縁だったので、ちょっと驚いたが「ことしの3冊」になるほどの内容だったかなと少し疑問に思った。 前置きはこのくらいにして、ことしの俺のベストワンは文句なしに恩田陸の「蜜蜂と遠雷」である。2月15日にその素晴らしさについてすでにつぶやいたので詳しくは述べないが、クラシック音痴の俺が登場人物がピアノコンクールで弾く曲を収録したCDを求めてしまうほどだった。 2位は増田俊也著「北海タイムス物語」。古き良き時代のつぶれそうな新聞社の仕事がよく書けていると思った。3位はことしはまった原田マハの「楽園のカンヴァス」だ。12年の作品で山本周五郎賞を取った。画家のアンリ・ルソーを取り上げている。芸術家をテーマにしたマハさんの作品では「暗幕のゲルニカ」「リーチ先生」「アノニム」「たゆたえども沈まず」もなかなかだった。 4位は被差別部落に生まれた食肉業の父の一生を描いた上原善広の「路地の子」。迫力が半端ではない。5位は朝日新聞ニューヨーク特派員だった金成隆一著「ルポ トランプ王国」。大統領選の1年前からラストベルトに通いつめ、あのトランプが勝つかもしれないと感じていたセンスが素晴らしい。 以下は順位はないようなものだが、原田マハが美術ものでなくともすごい力量があると知った、女性スピーチライターが主人公の「本日は、お日和もよく」。読書感想文の課題図書に指定して10年ぶりに再読して感動した宇江佐真理の「斬られ権左」。新谷学の「週刊文春編集長の仕事術」。これは4月7日につぶやいた。取材・編集に携わる人間の必読書と思う。 急死が惜しまれる葉室麟さんのことしの本の中では「草笛物語」か。直木賞を取った「蜩ノ記」の続編のような作品である。10位には永野健著「バブル」を挙げておこう。あのバブル期、いったい何が起きているのか分からず、ただ駆けずり回っていた俺なんかには、なるほどそうだったのかと思える良書だった。 × × × × × 本年もご愛読ありがとうございました。新年は4日からつぶやき再開の予定です。皆さま、良い年をお迎えください。なお、拙宅では3種のバラで新春を迎えます。薄紅のフェリシタル、黄色のバニラスカイ、うすいピンクのダイヤモンドローズです。ちょっと豪華。 |
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