隠居志願のつぶやき2017

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...... 2018年01月16日 の日記 ......
■ 本質を突く女は……   [ NO. 2018011601-1 ]
 日曜日は読書感想文の添削のアルバイトをもう10年ほど請け負っている団体で読書講座をかましてきた。年に2回の講座。俺の受け持ちは大学4年生3人だ。4年前には20人ほどいた学生が、寮生活になじまないといった理由でどんどん辞めていき、3人になってしまった。人数が少なくなっても90分しゃべる内容に手抜きはできない。この4年間に読んでもらった課題図書(毎月1冊)の作家の作風、受賞歴、その他の作品について4時間ほど下調べし、「いろいろな作家を知ってほしかったんだよ」という感じで話すことにした。
 読書講座の前に、この団体に60人ほど在籍する学生から予選で選ばれた6人によるビブリオバトルという試みが行われ、俺ら4人の講師も採点に加わることになった。このバトル、自分が感動した本について約5分間のスピーチをし、講師、職員、学生の投票で優勝者を決め、「キンドル」がプレゼントされるというもの。
 よい書評というのは読み終わったら書店に駆け出したくなる文章と丸谷才一が書いていたが、まさにそれをお話で競おうという試みで、今回が2度目。
 トップバッターは「君の膵臓を食べたい」と紹介した2年の女の子。こういうタイトルの付け方はよくない、と敬遠していた本。そんな内容なら読んでもよかったかなと思うスピーチだった。スティーブ・ジョブスのように歩き回りながら「プレゼンテーションZen」を紹介したのが1年生の男の子。身振り手振りたっぷりで語ったが、ちょっと鼻についたのか3位にも入れなかった。
 激戦でバトルを1票差で制したのは森見登美彦の書簡体小説「恋文の技術」を紹介した5年生の男の子。この小説で一番心に残った言葉は「本質を突く女はモテない」という言葉で、自分が書いた恋文の経験などをまじえ訥々と話した。
 俺が1票をいれたのもこの男の子で、講評を求められ「『本質を突く……』の言葉にはしびれました。俺んとこにお礼に来なさい。300ページの本を読んで脳裏に刻まれるのはたった1行かもしれないが、その1行がありさえすれば、その本を手にした甲斐があったと言えるのではないか」。
 そのあと90分をノンストップで奥田英朗、藤沢周平、三浦しをん、山本一力、米原万里、冲方丁、葉室麟、原田マハ、横山秀夫らの作家について、しゃべり続けた。1年留学したため、これから就職試験に挑む学生に一冊でも読みたいなと思う本が紹介できたらよかったと思っているのだが。

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