今、全国の新聞業界の人間が苦々しく思いつつも、手にしている新潮社新書がある。2月20日に刊行された畑尾一知著「新聞社崩壊」である。畑尾氏は77年に東大を出て、朝日新聞の販売局に入り販売管理部長などを歴任して3年前退社した。販売局一筋で編集部門の人間にはよく分からない販売の裏表に通じている方だ。 畑尾氏は昨今の新聞の凋落について、NHK放送文化研究所の国民生活時間調査をもとに、2005年からの10年間で新聞を読んでいる人は5000万人から25%減って、15年には3700万人となり、この傾向が今後10年も続くとすると、25年には2600万人にまで落ち込むと推定している。 読む人が少なくなっているのだから、全国の新聞社(91社)が発行している新聞も、05年の5260万部から15年には16%減って4420万部となり、売上高は2.4兆円から1.79兆円に落ちた。一方、総費用は1.72兆円で利益は660億円、営業利益率は3.7%。これが25年にはマイナス20%になるという。 10年間で読者が25%減少したのに発行部数減が16%にとどまっている理由について畑尾氏は「約10%が販売店の在庫=予備紙+押し紙=増となっている」と結論付けているのだ。そして、91社の財務状況を点数表示し、朝日・読売のように上位の全国紙と下位の毎日・産経、頑張っている静岡、中国、高知、熊本日日などの地方紙の名前を挙げているのだ。 ほんに新聞は若い層に見向きもされず、年寄りの読むモノになってしまった。なぜこんなに新聞が読まれなくなったのか、畑尾氏がこの新書では指摘していない点を記したい。それは30年前のヤクザまがいの拡張員による強引なセールスが新聞離れの大きな要因という点だ。 ナベツネの新聞社が先頭になり、金にあかせてナベカマで読者を広げようとした時代があった。女子大では新聞拡張員が来たらドアを開けてはならないというご指導が行われていたのだ。セールスマンが蛇蝎のごとく嫌われる商品に明日はないではないか。車の日産ファンの家にトヨタのセールスマンが訪れた場合、パンフレットくらいは手に取るだろう。しかし、新聞の拡張員にはドアを開けないのだった。 スマホなどのデジタル化の流れもある。しかし、30年前からのヤクザまがいの拡張が、今日のアナログの新聞の衰退を招いたことは間違いない。1000万部を目指した読売の罪は大きいで。
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