夕刊サラリーマンページのデスクをしていた20数年前、「二世は入れないいい会社」のテーマで若手にトップ原稿を書いてもらったことがある。人気上位企業、東京海上が在籍者の2親等以内は入社させないとか、当時は立派な会社だった東京電力が本店部長以上の子弟は入社させないということを聞きつけ、二世三世の跳梁跋扈が竹橋の新聞社の衰退を招いたと感じていた俺は、東京本社”5階”(役員フロアがある)の人間に読ませようと、取材先はこことここと指示し、若手のFくんに執筆をお願いしたのだ。 今はA紙Y紙に大きく水を開けられた竹橋の新聞社(なんと17年下期は部数が300万部を割り292万部になったとか)だが、昭和29年には日本一の発行部数を誇り、それだけ待遇も良く、俺が入社したことは石を投げれば二世三世に当たるほどの状況だったのである。 あれから幾星霜、今や新聞を読む若者は激減し、ネット全盛の世の中になった。きのう開かれた大学バド部同期のゴルフコンペとそのあとの飲み会でも「そうなのか」と思うことがあった。頭はいいし、バドミントンは強いしと言われたEくんと話していて、彼の長男坊が国営放送の経済部に在籍していることを初めて知ったのである。 Eくんはナベツネの会社の大阪本社に入り、社会部長などを歴任し役員にもなり、ヨミウリグループの旅行会社の社長を一昨年まで務めた。そのEくんのせがれが新聞の世界ではなく、放送の世界を選んだ。NHKはこのところ「放送と通信の融合」を掲げ、ネットの世界にも大々的に進出している。デジタル時代に展望をなかなか見いだせない新聞社と違い、生き残り確実な団体である。 そういえば、俺に文章教室のアルバイトを紹介してくれたT先輩のせがれも国営放送の社会部で活躍中だし、栃木の新聞社の会長、鬼瓦のお嬢さんも国営放送でディレクターをしている。マスコミ志願なら親のいる新聞社の方がなじみがあったろうに、反骨心が強いのか、父親の会社は選ばないという正しい選択をしている。 翻って政界を見るに、シンゾーくんも麻生君も三世。自民党は世襲議員ばっかしだ。そんな奴らに下々のことなど分かる訳ないよな。思い起こせば十数年前、次女が竹橋の新聞社の出版セクションを受験すると言ってきた時、「それだけは止めろ」と伝えた記憶がある。まったく親のいる会社に進もうなんて了見はよろしくない。同業を目指すなら、親のライバル会社に行くべきだと思うね。 |
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