餃子の都のホームグラウンドだった最高級居酒屋「くうめい」からレターパックが届いたのは2週間ほど前である。開けると黒のボールペン2本が入っていて、添えられた手紙に「おかげさまで5周年を迎えました。記念に店の名前入りのボールペンを作りましたので、末永く愛用してください」とあった。 「くうめい」は毎年正月の客にボールペンを年賀に配っていた。開店5カ月目の客だった俺は年賀のペンを4本いただいたことになる。それが5周年。ついに名前入りである。文具に強い長女が「ジェットストリームだ。このボールペン、書きやすいんだよ」と言った。で、2本のうち1本は彼女に上げた。次女の誕生祝で彼女も「くうめい」のカウンターに座ったことがあるのである。 「5周年おめでとう」と書いたお礼状をただちに送った。俺は長年、緑色の柄の「ボールペンテル」(0.6_)を使っているので、この「ジェットストリーム」を持ち歩くことはないが、確かに滑りがよく書きやすそう。ライティングデスクの緑色のペントレーの上にあるが、ちょっと気になる文字が書いてある。「Bar&Kitchen」と「くうめい」の間に「+M」という文字が書いてあるのだ。 Mとは何ぞや? で先週の夜中に電話してみた。なつかしい玉ちゃんママが出てきた。「あのMってなあに?」代わったマスターの曰く「ミュージックなんです」。そうか、マスターはロックに強かったなぁ。昨年の4周年の際には、ジャズバンドの曲に合わせて、即興で♪く〜めい!く〜めい!!♪と歌ったのを思い出した。 そこで問われた。「お葉書にあった『一斗二升五合!』とは?」で、「あぁ、あれね。一斗は五升の倍。二升はますます。五合は半升で繁盛。『ご商売ますます繁盛』の洒落。古い居酒屋さんに掛かっているんだって」。3年目に店を倍の大きさに広げた「くうめい」だから、繁盛はしているのだけれど、店は客が創るものでもある。いい客が切れ目なく来てほしいな、と思ったのである。 |
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