 「半分、青い」の高校3年生は進学、就職にと青春を謳歌しているが、俺のつまらない高3時代は、男女同数の3Dでとびきりの美女がいなかったものだから、2カ月に一度は席替え動議を提案していた。ある時は文系数学の授業が一緒になる3Bの美形の女子の顔がよく見えるように、黒板と90度の角度に向き合うように机を並べ、教室の真ん中に教壇がくるようなこともやった。与野党が正面からぶつかるイギリス議会のイメージ。 俺らは入り口から遠いサイドに座り、3Bの美女連が廊下側の入り口から入ってくるのを待つ格好にした。そしたら英語の女教師は教室に入るなり、教壇を黒板の方に引きずっていったことがあったなぁ。 バイト先の俺の席は、週5日出勤する校閲の絶世の美女の右隣で若い女性社員が大勢いる”島”の真ん中。チェックし終わった書類を突き合わせるのに便利だったが、4月に10人近い新入社員が入り、その中の1人が俺の属している部に来ることになったため、十日ほど前上司が「すいませんが、別の島に移ってもらえませんか」。隣の部の空きスペースに「遠島」を申し付けられた。 ところが、この席は特等席だった。勤務中ずっと付け放しの8台のテレビが右横4bの正面に見えるのである。音は出ないが、財務事務次官のセクハラとかTOKIOの山口達也メンバー(どうもこの表現、違和感があるな)の書類送検などお昼のワイドショーの流れがだいたい分かるのだ。俺の右横の席は予備のデスクトップパソコンの席で、ほとんど誰も座ることがない。まことに見晴らしがよいのだ。 昨日など珍しく1件も見るべき広報発表資料がなく、すっとテレビを見ていた。途中でどうも昼寝に落ちたみたいだったが……。おまけに4月上旬までの席は目の前が上司のおじさんだったが、今の席は”川”を隔てておじさんの髪の少なくなった頭頂部が見える。バイトを始めたときから世話になっているアシスタントの美女は右45度に座っているのだが、この前など「堂々とテレビを見てますね」と言われてしまった。 島流しにはなったが、校閲をし終わると絶世の美女が「見終わりました」とこっちの島にやってくる。発表文をチェックするのは、そこは長年新聞紙面に親しんでいただけに俺の方が圧倒的に早いし、間違いを発見する回数も俺の方が多い。島流しになって、返って職場環境はよくなったのである。 |
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