俺らの年代の人間が映画鑑賞史を振り返るのに最適な新書が出た。5月20日に刊行された文春新書「週刊文春『シネマチャート』全記録」である。1977年6月にスタートした週刊文春の映画評「シネマチャート」は☆の数(03年までは☆3つが満点、04年以降は☆5つが満点)で取り上げる映画の評価をしている。 それを60点満点で計算し、洋画では上位200作品、邦画は同50作品を紹介している。89年にサラリーマン向け夕刊ページを始めた時は、月1回サラリーマンが見るべき映画のコーナーを作った。そこで取り上げられた映画を中心に月1本は映画を観ようと思ったが、なかなか公約通りにいかなかった。 今、この新書の上位作品のリストをつらつら眺めると、その映画を観た時の心持ちがよみがえってくる。☆を付けたのは、池波正太郎、小森和子、おすぎ、中野翠らこの40年間に29人。全部で4000本以上の映画を取り上げてきた。 その中で洋画の満点は「イノセント」「地獄の黙示録」など10作品。このうち俺は「スピード」(90年)と「ミリオンダラー・ベイビー」(04年)しか、観ていない。200位までに入った作品では「クレイマー・クレイマー」(79年)「さらばわが愛 覇王別姫」(93年)「遠い夜明け」(87年)「フィールドオブドリームス」(89年)「ミッドナイトエクスプレス」(78年)「評決」(82年)「ラ・ラ・ランド」(16年)「ダイ・ハード」(88年)「非情城市」(89年)「アポロ13号」(95年)「007私を愛したスパイ」(77年)「ジュリア」(77年)「ラストサムライ」(03年)「ガンジー」(82年)の14作品。う〜ん、あまりの少なさに愕然とする。 俺の不満は「ニューシネマパラダイス」(89年)と「チョコレート」(01年)がランクに入っていないことだ。 一方、邦画はベスト50の中で、「愛のコリーダ」(76年)「駅 STATION」(81年)「お葬式」(84 年)「事件」(78年)「影武者」(80年)「泥の河」(81年)「舟を編む」(13年)「男はつらいよ寅次郎頑張れ」(77年)「マルサの女2」(88年)「幸福の黄色いハンカチ」(77年)「復讐するは我にあり」(79年)の11作品は観ている。 「クライマーズ・ハイ」(08年)「Shall we ダンス?」(96年)寅さんの「寅次郎ハイビスカスの花」(80年)が入っていないのは不満だ。娘たちの母親と一緒になるきっかけとなった「復讐するは……」はやはり忘れられない1本だ。 カンヌ映画祭でパルムドールを取った是枝裕和監督の「万引き家族」がきょうから封切られる。現役の頃よりはるかに時間が自由になるのだから、映画をもっと観ないとな。ことし映画館では「ペンタゴン・ペーパーズ」などまだ3本しか観ていないのである。 |
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