国民的作家とされる司馬遼太郎(1923〜96、72歳で没)の著作をあまり読んでこなかった。ちょっと高みに立ったような書きぶりが鼻につき、敬遠したのだ。出版と同時期に読んだのは好きな黒田如水を取り上げた「播磨灘物語」くらい。司馬遼が鳥の目なら、虫の目は藤沢周平さん。身辺にゴタゴタがあった40歳前後の頃、生きていればいいことがあるかも知れないと思わせる藤沢作品に浸り切り、1年で文庫50冊は読んだろうか。その後も新作が出るたびに手に取った。 周平さんは97年に69歳で亡くなったが、没後21年たつというのに、ファンはなくならない。周平さんは英雄嫌いだから、俺も自然、そっちの方面にはうとい。いま、大河ドラマは「西郷どん」で原作は林真理子である。このケタ外れの人物は、やはり司馬遼の「翔ぶが如く」を読まねばならないのではないか。 実は数年前、NHKが3年がかりで年末に、日露戦争をテーマにした「坂の上の雲」を放送した時、司馬遼の原作(文庫で8巻)を読み、ベラボーに面白く「もっと早く読むのだった」と思った。今回、林真理子は読みたいとは思わなかったが、大河ドラマをきっかけに「翔ぶが如く」(75〜76年刊、文庫全10巻)に挑戦しようと思った。 今年の本屋大賞を取った「ガラスの孤城」を読み終わった先々週から通勤電車の中で読んでいるのだが、明治政府を築いた西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允の三巨頭のほか、三条実美、岩倉具視、伊藤博文、大隈重信、川路利良、桐野利秋らが次々に登場。司馬遼の見方がそこここにちりばめられ、面白い。もう2巻目を読み終わってしまった。この分で行くと7月中に読み終わるのではないか。 司馬遼太郎は本格的に新作に取り組むときは、神田の古本屋でトラック1台分の資料を購入したといわれるが、なるほどのエピソードが曳かれており、英傑たちの人物像が浮かび上がる。その技はたいしたもんだ。 どこまでが史実に基づくものか分からないが、明治初年の英傑たちがとてつもないスケールの男たちだったことはよく分かる。それに引き替え、今の長州出身の宰相は国会で野党に突っ込まれると、キンキン声を張り上げたりするから、いやになっちゃうなぁ。 |
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