俺の校閲のバイト先は大手PR会社のため、全国紙はもちろん日本中の地方紙を購読しており、その日のうちに紙面を読むことができる。 だから、昨年まで世話になっていた栃木の新聞に目を通すことができ、先月退任した鬼瓦会長が退職記念に奨学金に30万両を寄付したとか、高級居酒屋で送別会を開いてくれた街中記者がジャズピアノに取り組んでいるとか、地域おこし映画「キスできる餃子」製作に幹部社員が賛助金を出したとかの動きを確認できるのである。 一方、日本で発行されている雑誌も、芸能、ファッションの類いまで全部揃っている。だから、「文春砲」も買わず、校閲の仕事の手の空いた時に社内で見る。お家騒動の起きている文春はこのところ耳目を引く記事がない。ライバルがそういう状態だと新潮にも一時の勢いがない。 バイト先の社員は日々の仕事が忙しいのか、あまりこれらの新聞、雑誌に目を通す余裕はないようだ。雑誌といえば袋とじだが、このグラビアページなどの袋とじはそのままの状態で朽ち果てている。 俺なんか宇都宮時代は入り浸っていた珈琲屋では、写真週刊誌「フライデー」の袋とじページをパウチされたメニューの堅い端を使ってきれいに開き、見事なヌードを鑑賞するのを常としていた。カッターを持ち歩く癖はないので、メニューを使って雑にならないようにきちっと開けていた。これは後からこの手の雑誌を手にする客にも喜ばれていたはずだ。 しかし、今のバイト先でアルバイト風情に袋とじを開ける権利は残念ながら、ない。行きつけの美容院「メッセ」の主任ヘアデザイナー、知ちゃんによれば雑誌の占いのページを読みたいお客さんもいるので、袋とじ部分は店側であらかじめカットしているのだとか。頭のカットも大事だが、雑誌のカットにも気を使っているのである。 バイト先のあまたの雑誌の袋とじ。出す方はそれなりにリキを入れて作っているのに、みられないままでは、ちと可愛そうだよな。 |
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