駆け出しの福島支局時代から暇があると「パスタン」とかテレビ局の放送記者だった会田さんの奥さんがやっていた「涅雅」などのジャズ喫茶に行き、ジャズを聴いていた。贔屓はトミー・フラナガン(1930〜2001)というピアニストで、名盤と言われるソニー・ロリンズ(ts)の「サキソフォンコロッサス」、ケニー・ドーハム(tp)の「クワイエットケニー」、ジョン・コルトレーン(ts)の「ジャイアントステップス」でもフラナガンが参加していた。 一番好きなのはエラ・フィッツジェラルドのボーカルの伴奏を務めているアルバムで、エラおばさんの絶唱を見事に引き出す演奏が素晴らしい。フラナガンは主役を引き立たせるピアノなのだ。もちろんリーダーアルバムもたくさん出していて、そのほとんどを持っている。「オーバーシーズ」というのが一番有名なのだが、自宅のCDケースを一生懸命探したが、見つからない。あれ、どうしたんだろう。 土曜日は国立の音楽茶屋「奏」で、ギター&ボーカル、平田王子さんの「旅の途中」CD発売記念ライブがあった。サックスの巨匠、宮野さんとピアノの大口純一郎さんのトリオ。ところが俺は高校野球準々決勝、金足農‐近江戦に見入っていた。すると夕方5時ちょうどにメールが来た。平田さんからで「きょうのライブは5時からですよ」。前々から行くと言っていたのに客席に俺の姿がないので、メールをくれたみたい。 「7時からだと思ってた。今から飛んでいきます」と返信し、チャリでたまらん坂を駆け下り、ファーストステージの3、4曲が終わった「奏」に飛び込んだ。このライブは特にセカンドステージが熱のこもった素晴らしい演奏で、酷暑の夏を忘れさせる内容だった。宮野さんは当然として、大口さんはなんであんなに澄んだ音を響かせるのだろう。 もう十年以上聴いている平田さんには「十年前のCDにも入っている曲が進化してるね」とエラソーなことを言った。「奏」のマスター、頭金くんから「金足がツーランスクイズで逆転勝利した」と聞き、やった!とも思ったのである。 夜中、平田さんから「ライブに来ていただき、ありがとう」のメールを頂戴したので「大口さんはトミー・フラナガンを思わせるね」と返したら、なんとフラナガンを知らないという。う〜ん、音楽ってのは同時代性にずいぶんと左右されるものみたい。 30年の歴史のある「奏」だが、アップライトのピアノが入ったのは十年ほど前。ずいぶんライブの音に奥行が出たと思う。3年ほど前の年忘れコンサートでは渋谷毅さんと大口さんの連弾なんて、信じられないシーンもあったのである。 |
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