上野動物園はいま、赤ちゃんパンダのシャンシャンでにぎわっているが、9月4日は初代パンダのペア、雌のランランが39年前身重で死んだ日だ。当時社会部の上野署を中心とする6方面のサツ回りで、ランランの出産に向けての準備、死亡にまつわる原稿をずいぶん書いた。 それから2年後、うちに長女が生まれた。蘭子と名付けようとして、カミサンにえらく怒られた記憶がある。あれから幾星霜、おとといの日曜夜、長女の誕生祝の宴があった。場所は母親が今住んでいる西八王子のこじゃれた和風料理の店。出席は長女とその両親と二女、それに母親が再婚して(のちに×2)生まれた女の子といっても芳紀23歳の計5人である。 この店は母親が4年前の開店当初から目を付けていた店とかで、マンションの1階にあるが、個室もありそこからは箱庭風のしゃれた庭と年代物の松の盆栽が見える。予約が通っておらず、急な準備となったが、出てくる料理は器とともに全部凝っていて、栗豚の焼いたのがうまかった。飲み物は俺は初めて見る梅ワインにした。梅酒よりすっきりしていてこれは正解。 誕生日というのを聞きつけたのか、アイスクリームと果物の取り合わせのデザートではチョコレートでハッピーバースデーと書かれたプレートが出てきて、長女は大喜び。彼女は勤めていた高校でのいじめ事件の処理に翻弄され、メンタルに病み、養護教諭の職をこの3月末辞した。今は次の働き場所を探している最中だが、「もう責任を押し付けられる仕事はイヤ」との話に、次女が「校閲ガールなんていいんじゃない」。校閲なら他人とそう交わらなくて済むので、これはなかなかのアイデアと思った。 昨今は飲食店の中は禁煙で、玄関の脇にタバコスペースがある。セブンスターをくゆらしていると、芳紀23歳も一服しに来た。「歯医者さんで働いているんだって?」と声をかけると「立ち仕事が辛いので、いまは別のところで事務を手伝ってます」。ウチの娘たちとは違ってスラリとした美女で、3年ほど前に会食した時と比べずいぶんと大人びて落ち着いて見えた。 こんまい次女の隣に立つと、どっちが年上かわからないほどである。もっとも一番稼ぎのある次女は、長女にしゃれた上着をプレゼント。俺たちにはおいしいチョコや煎餅をくれた。地元ということで母親が全部持つと粋がったが、そうもいかぬと福沢先生を一人だけ置いてきました。
|
|