5年前、栃木の新聞社に勤め始めた時、宇都宮市が餃子やジャズだけでなく、カクテルの街を標榜していることを知った。酒は苦手だが、知り合いが訪ねてきたとき、カクテルバーの一つも知らないのでは話にならないと、なじみの店を作るべく努力はしたのである。 各種のコンクールで上位入賞しているマスターがやっているYというバーが見つかった。で、夕方6時過ぎにエレベーターを登っていくと「すいません。7時からなんです」というのが、真理ちゃんとの出会いだった。 その日からYに勤め始めた那須出身の素直な娘で、2年ほど他の店を手伝っていたとかで、シェーカーを振る姿も様になっていた。で、「俺も宇都宮にデビューしたばかり。一緒に頑張ろう」と誓い合った。 それから東京から文章教室の教え子やゼミ仲間が遊びに寄ってくれるたびに、女性バーテンダーが作るカクテルを賞味してもらった。ところが、おととしの正月だったか、真理ちゃんがいない。聞けば寿退職とのことだった。風の便りにホテルマンと一緒になり、市内のカフェを手伝っているとか。で、カフェに押しかけ驚かせもした。 昨年の6月、俺が4年間の任期を終え、宇都宮を去る時は行きつけの珈琲屋さんの家族会のメンバーが焼肉屋で送別会をしてくれた。長男格のNくんが真理ちゃんを以前から知っており、彼女も送別会に呼んでくれた。その時いただいた益子焼のコーヒーカップは西国でよく使っているのだ。 こういう縁は大事にしたい。で、8月の彼女の誕生日にお祝いのはがきを出したら、いつもは筆まめな真理ちゃんから音沙汰がない。ああ、これはそういうことかなと思ったら、やっぱり当たりだった。7月末に女の子を出産しました、母子ともに元気ですという便りが先週あったのだ。 名前を実央(みお)ちゃんという。長年、事件事故などで人名を書く仕事をしてきたが、実央という名は初めて見た。いい名前だ。それで実央ちゃん宛てにはがきを出しました。「やさしいママのところに生まれてきてよかったね。すくすくと育ってね」。 あさってで生まれてちょうど2カ月とか。おそらくみおちゃんが人生で初めて受け取る手紙だろう。こういうお祝いの仕方もあってよいと思っているのです。 × × × × 今週の拙宅の花は「ピンクディプル」というピンクの大輪のバラと白くて淵が紫のリシアンサス、それに臙脂色のカーネーションです。 |
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