好景気で売り手市場だったバブルの頃、内定を蹴った学生を喫茶店に呼び出し、人事担当者が千円札をテーブルにドンと置き、コーヒーをぶっかけるというシーンをテレビで見たことがある。クリーニング代を払ってやるんだから、コーヒーをかけられるくらい我慢しろ、せっかく内定を出してやったのに、顔を潰しやがってという怒りからの行為だったのだろう。 今も売り手市場だとか。しかし、人事担当者がそんなことをしたら、あっと言う間にネット空間に「暴力企業」と情報が流れ、その企業は立ちいかなくなるなるだろう。だから、せっかく出した内定から逃げた学生に水をぶっかけるような度胸のある奴はいないだろう。 かつて夕刊サラリーマンページのデスクをしていた時、週刊誌にあった「黒服日記」にヒントを得て、週1で「リクルーター日記」というコラムを半年ほど続けたことがあった。就職協定を守るのは上辺だけ。実際はフライイングがあったり囲い込みが進んでいるのを、若手記者に、リクルーターをしている大学時代の同級生から「匿名にするからと言って、聞いてこい」と毎回60行の囲みにしてもらったのだ。 新聞がつまらなくなったのは、建前の記事ばかりで一歩踏み込んだ裏を描いていないからではないか。 先週の月曜日だったか、バイト先で校閲作業に使う赤のサインペンを持って、赤字を入れた広報発表資料を女性社員のところに持って行った際、よほどボーっとしていたのだろう、赤ペンを振り回して「ここは、こう直した方がいいよね」と話しているうち、机の上にあった彼女のコートに赤で何本もの線を書いてしまった。 キッと目をむいた彼女は、赤線を消しゴムで消そうとしたが、簡単に消えるものではない。「いただいたものなので、ショックです」となじるようなメールも来た。俺はボー然。なんでそんな動きをしたのか分からない。 で、今週、彼女の席まで出頭し「クリーニングに出したでしょ?クリーニング代は払わせて」と伝えたが、「机の上にコートを置いていた私も悪い。いいです」と金を受け取ってくれない。あわれな時給アルバイトを慮ってのことか。十年選手と思われる彼女。もうすぐガッポリ、ボーナスをもらうから、いいかなぁ。 × × × × 今週の拙宅の花は「オークランド」という大輪の黄色いバラと「スーパーセンセーション」という淡いピンクのスプレーバラ、それに臙脂色の「マルベリー」というマムです。 |
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