86歳のプロスキーヤー、三浦雄一郎が南米の最高峰、アコンカグアに登るのだとか。80歳でエベレストに登ったひとだから、へぇと言うしかないが、これは考えてみるとすごい。彼の体をずっと診ている医者が、筋力は80%、心肺能力は60%に落ちているとして、「今回はどうでしょうか」と話していたが、挑もうという気力だけでも、我ら凡愚にはとても想像できない。 歳をとると若い頃は考えもつかなかったことが身体に起きてくる。如実にそう思うのが、眠る力だ。長時間続けて眠れないのだ。若い頃はいくらでも眠れたが、このところ夜中の1時過ぎに床に就いても、朝7時過ぎに目が覚めてしまう。 同期生の中には夜中に二、三度、小用に起きてしまうというのもいる。俺は幸いそういうことはないのだが、7時過ぎに目が覚めると、バイトがないときでもあと続けて寝ていることができない。なんか睡眠不十分のまま起きだし、昼過ぎとか夕方6時ごろに睡魔が襲ってきてソファでテレビを付けたまま寝てしまうことが、このごろ多発している。 ところがバイトが休みだった昨日は、連続睡眠10時間という大記録を打ち立てた。土曜日、中国語の学習を夕方4時から10時間というのをやり、大敗もあって体が疲れていたのだろう。昨今は疲れが出るのは翌日というより1日後に起きる。で、日曜日は生物学に興じ(これも大敗)、夜テレビをぐずぐず見ていて、1時過ぎに寝たのだが、朝、気が付いたら11時半だった。 ああ、堂々の十時間睡眠。久方ぶりに「よく寝たぁ」という感じだった。十時間も続けて眠れたのはこの1年で初めてのこと。”眠る力”が戻ってきたのか。ただ、それだけ疲れていたのか。急に寒くなり体が睡眠を欲しているのかも。 「年齢は常に初体験なのである」と銘打った作家、黒井千次の名著「老いのかたち」「老いの味わい」には、若き日の睡眠負債を取り戻すとして、よく眠る年寄の姿が描かれているが、これは夜から朝にかけての通常睡眠ではなく、昼間の居眠りのことと思われる。 |
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