第160回の芥川賞、直木賞がきのう16日夕決まった。芥川賞は上田岳弘の仮想通貨をテーマにした「ニムロッド」と町屋良平のスランプに陥ったボクサーの話「1R1分34秒」の2作。直木賞は終戦7年目から本土復帰までの沖縄を舞台にした真藤順丈の「宝島」だ。 俺は最近の芥川賞受賞作品を読むのは辛く、最近では村田沙耶香の「コンビニ人間」くらいしか読んでいない。今回もちょっとという感じなのだが、「宝島」は実は昨年評判になった時に、あの541頁の大作にトライ。けっこう時間はかかったが、読了した。力作で熱量は半端ではない。 その直木賞受賞作をなぜ、18年の俺のベストテンに入れなかったかをちと考えてみたい。「宝島」は、アメリカ統治の下で基地に忍び込んで盗みを働く”英雄”オンちゃんを失った3人の幼馴染、グスク、レイ、ヤマコの20年間の物語。グスクは警官になり、ヤマコは教師になり、レイはテロリストになる。3人の思いは行方不明のオンちゃんを見つけ出すことだった。 この20年の間に、米兵による事件・事故への悲しみと怒り、反基地・本土復帰を求めるデモがある。3人はそれぞれの立場で米兵に対し、復帰デモに係わる。その思いが沖縄の言葉で熱く語られる。その熱気にちょっと嫌気が差したのか。 真藤は東京出身で構想に7年を、執筆に3年の歳月をかけたという。沖縄出身でないことで執筆に詰まることがあったが、沖縄を歩き、沖縄を考え続けることで「小説家はどの土地の誰の話でも書いていい」と心を決めたんだとか。沖縄に出自のないことを読む前から知っていたことが、いいのだろうかと評価を下げた背景にはあったように思う。 とはいえ、受賞によって真藤も語っているように、この本を読んで、沖縄について知る人が増えることは悪いことではない。本土の人間には思いもよらない米軍の高慢な統治があったのだし、日本からも虐げられていたのだから。 それらを加味しても、やっぱり俺のベストテンには入らない。文体に関する趣味の問題かもな。 |
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