隠居志願のつぶやき2017

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...... 2019年02月14日 の日記 ......
■ はなしの話   [ NO. 2019021401-1 ]
 初体験と聞けば若い人は”あのこと”と思うだろうが、隠居志願になると作家、黒井千次さんが「老いのたのしみ」などで説かれた「年齢とは常に初体験なのである」を思い出す。オロオロ、ハラハラ、ドギマギ。初体験にはそんな言葉がよく似合う。
 俺は昨秋、右上の奥歯4本を入れ歯にしたばかりなのだが、実は上の前歯5本も差し歯になっている。その一番右の前歯(糸切り歯)にフックを引っ掛け、上あごにアーチ状の樹脂をつなげ、左上の奥歯に留め具をひっかけ、この4本分の入れ歯を支えている。
 この1週間ほど前歯5本(実は差し歯で5本が横につながっている)がちとグラグラし、モノを食う時には痛みが走り、前歯が壊れるといやだな、と思っていたのだが、きのうの朝目が覚めると、前歯がはずれかかり、左の2本がぶら下がるかっこうになっていたのである。こりゃ、えらいことになった。
 幸いバイトの休みの日だった。入れ歯を作ってもらった近所の歯医者に連絡すると「予約がいっぱいで、4時に来てください。お待ちになるかも」という。前歯がフガフガしていると電話も話し辛いものだ。こんなのは初体験である。
 4時までだと腹が減る。右奥4本の入れ歯をはめると、グラグラは少しおさまった。意を決してカレーなら食えるかもと、西国駅前の「すきや」でカレーを流し込み、ドトールでコーヒーを飲む。こういう時って、時間がたたないんだよなぁ。
 4時前、歯医者に。小一時間待たされ、施術の椅子に座ると昨秋入れ歯を作ってくれた女性院長さんが「いつかはこうなると思ってた。前歯がないと困るわよね」と麻酔注射。「型を取ります」と前歯5本のところに樹脂をかませ、乾くのを待ってカパッと取ると、あれあれ、5本の前歯が全部取れちゃった。こんなに軽く取れちゃうものなのか。真ん中の2本は、ほとんど根っこの部分がなかった。
 えーっ、これからどうするのかなぁと思っていると、1時間ほどで奥の4本の入れ歯のアーチの台に、前歯5本を緊急に製造して取り付け、左奥の1点で支える部分入れ歯が出来上がった。
 水曜日夜は2カ月前から長女と夕飯を食うことにしているが、娘はおかゆと細かく切ったメンチカツ、たまねぎとあぶらげの具がどろどろの味噌汁を用意してくれていた。この1週間、前歯が痛くて食べるのに難儀をしていたが、新しい入れ歯の方が食べやすかった。池江璃花子さんの白血病に比べりゃ、なんてことない前歯の欠損だが、この初体験には少々うろたえたのである。

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