政策モノを主とする経済部の原稿は1日1回書けばいいが、動いている事件を追う社会部の原稿は1日に何回も書き直すことがある。79年に上野動物園のパンダのランランが倒れた時は、夕刊早番用、夕刊遅番用、東北など夕刊のない統合地域用、夕刊早番に対応する朝刊12版用、朝刊最終14版用と、1日5回本記原稿を書き直した。 統合地域用の朝刊原稿は前日に書いた以降の事象から書き出すので、その日の夕刊より前の時点に時計の針を戻す必要があり、頭の中がウニになった。古来、新聞には同じ記事を載せてはならないといルールがあったのだ。ところが昨今は夕刊を購読していない読者も多くなったため、「一部地域既報」という断り書きが付くケースもままあるようになった。 夕刊を取らない読者を新聞社側では「セット割れ」と称し、夕刊を読むひまはないという家庭が増え、「セット割れ」は年々増加している。それどころかニュースはネットかテレビで知るから、ゴミになる新聞はもういらないという人も増え、今や、都内で新聞を購読していない層は半数を超えた。2年前まで過ごした栃木でも、3割の世帯で新聞を購読していない。 新聞社の経営は販売収入と広告収入の両輪から成り立っているから、各社の経営は俺がいたころよりはるかに苦しくなっている。そんなご時世に天下の朝日新聞が、栃木、群馬の両県で3月いっぱいで夕刊の発行を取りやめると発表した。おそらく両県での夕刊読者数は朝刊読者数の2割以下だろうから、製作・輸送コストを考えると大幅なコスト削減につながると考えたのだろう。 すでにサンケイは十数年前から首都圏での夕刊発行を取りやめている。首都圏に比べシェアの高い関西圏での夕刊は発行を続けているにもかかわらずだ。朝日の栃木・群馬両県での夕刊廃止の動きを各社は息をこらして注目しているに違いない。大胆に予想すれば、大読売を除いて各社夕刊廃止の方向に進むのではないか。実際、栃木の県紙、下野新聞も群馬の県紙、上毛新聞も夕刊は発行していない。 夕刊の発行は止め、その分のニュースは各社のウエブサイトで見てという動きが一層強まり、かつては考えられなかったような特ダネを、朝刊最終14版の締切前からウエブサイトにアップするケースも進んでいる。とはいえ、ウエブではアナログの新聞のような”銭”につながらないのが辛いところなのだ。 |
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