ゴルフエッセーの名手、故夏坂健に「昭和天皇のパター」という本があり、「スコアがひどかった時の上手な言い訳は15本目のクラブに匹敵する」(球聖・ボビー・ジョーンズの言葉)というのが紹介されている。 そこに羅列されている言い訳は@前夜遅くまで飲んだA今朝は飲まず食わずでゴルフ場に駆け付けたBやたら多忙で半年ぶりのラウンド――など、俺なんかでもしばしば耳にするものや、C初めて使う新しいパターD花粉症がひどいEチクチクするゴルフウエアF自分に合わないコース設計G前の組のスロープレーH妙に色気のありすぎるキャディーIボールがディポットに入ってしまった不運Jプレー中の会社からの呼び出し電話K昨夜の女房とお袋のいざこざL飛び過ぎた結果のOBM忍び寄る老眼――など、ありとあらゆる類の言い訳が挙げられている。 今の俺だと、これに「口の中でガフガフする仮の入れ歯」というのを付け加えたいと思う。おとといはポカポカ陽気、桜満開の八王子市のゴルフ場で新年度初めての「悦夫会ゴルフ」が、同期の悦ちゃん、元社長の北さん、悦ちゃんと生年月日が同じ健さんのいつものメンバーで行われた。 前半、健さんがダイヤモンド入り一気通貫を早くも完成させ43と絶好調でトーナメントリーダー。俺も久々に49と50を切りこのところの「百獣の王」から脱出できるかと思ったのに、後半の4ホール目に左に引っ掛けOBとしてからスイングがおかしくなり、次のショートで2連続OB、10も叩いては100を切るどころではなくなった。 前半はちょっと勝っていた悦ちゃん、北さんとのホールバイホールの握りも後半は7ホール連続の負け。こんなことがあってよいのか。後半は記憶にない66。「百獣の王」プラス「猛五」になってしまった。すべてはガフガフする入れ歯のせいである。78歳になる北さんにグロスで3つも負けるとは、天を仰がざるをえない。 土曜はゴルフではなく花見に行ったということにしよう。自分への罰として、いつもは宅急便で送るゴルフバッグをかついで帰宅することにした。昨今、バッグの宅急便代は値上がりして片道で1700両もするのである。自らの体を酷使することにより、握りの負けを帳消しにしたのである。そうそう、オリンピックで大勝した健さんの懐を充てにして、高いクリーム餡蜜を花見のともとしたのである。 |
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