日曜夜は国立のライブスポット「F」で行われたサックスの巨匠、宮野さんと菅野くんの「アルトトークスウィズストリングス」のライブを聴きに行った。この二人の甘やかなメロディーにギター、バイオリン、チェロの絃が加わると、映画音楽などが一層やるせなさを増す。折しも十四夜の月が煌々と照り、実によい夕べだった。 宮野さんはこの日、71歳の誕生日。ファーストステージとセカンドステージの間の休憩時間に菅野くんに「きょうは宮野さんの誕生日って知ってた?」と話しかけたら、「あまり大っぴらにしないでと、本人が言ってるもんで……」。で、「年を取るとあんまりうれしくないんだよ」。でもアンコールでは、菅野くんが突然、ハッピーバースデーのメロディーを吹き始め、絃もそれに同調。宮野さんが深々と頭を垂れる展開に。そして「『1』になりました」と宮野さん。 終わって一つのテーブルを囲んでの歓談では、珍しく宮野さんが「この前、若い人と一緒に演奏したんだけど、グイグイくるのでついて行くのがやっとだった」とこぼすので、「若い人の生き血を吸っているから、いつまでも元気でいいんじゃない」とチャチャを入れた。 演奏では映画「スパルタカスの愛のテーマ」というのが印象に残った。菅野くんが「マイケル・ダグラスのお父さんのカーク・ダグラスが出た映画。カーク・ダグラスは100歳を過ぎてまだ存命。マイケルが父とそっくりの顔になってきた」と言うので「カーク・ダグラスには双子の兄がいて、任侠映画に出ていた。名前をヒーシャ・ダグラスという」というつまんないシャレを思いついた。 このひと月、寝る前に聞く音楽は、中島みゆきと宮野さんのCDを交互にかけているのだが、アルトサックスの掛け合いに絃が加わったウィズストリングスは沁みてきてなかなかいいんだよ。宮野さんのしっとりしたサックスの音に親しんでから30年余り。この出会いは俺のなかでは奇跡だな。 |
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