隠居志願のつぶやき2017

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...... 2019年09月26日 の日記 ......
■ 梨配りおじさん   [ NO. 2019092601-1 ]
 初任地福島は果物王国で、毎晩のようにメシを食べに行っていた店の女将に取り入っていたものだから、上京してからも収穫のシーズンになると、みずみずしい桃だの、蜜がたくさん詰まったリンゴなどが段ボール箱で届いた。しかし、独り暮らしではとても食べ切れるものではない。
 それで国立の知り合いに、果物をお裾分けして歩いた。チャリの荷台に段ボール箱を括り付け、子ども3人の書簡集主人のところは5コ、主任ヘアデザイナーの知ちゃんのところは子ども2人だから4コ、サックスの巨匠、宮野さんのところはご夫妻だけだから3コというように、リンゴ配りおじさんというのは、あれでなかなか楽しいものがあったのだ。
 しかし、女将は十年ほど前に亡くなり、果物の便りは途絶え、果物配りをすることはなくなった。2週間ほど前、ゴルフバッグの宅配便を待っていたら、2年前まで暮らしていた宇都宮の珈琲屋のママから梨が送られてきた。赤ん坊の頭ほどもある大きな梨である。同居している長女は今、体調を崩してちょっと入院中。こりゃ、とても食い切れない。はて、どうしたものかと思案し、そうだ、マンション管理組合の役員として一緒に苦労している方たちに上げたら、喜ばれると思った。
 で、「前にいた栃木から届きました。お裾分けです」と管理組合事務所に常駐しているおばさんに2コ、街路樹の伐採に駆り出された植栽担当の理事のおじさんとおばさんに2コずつ、Jコム工事のお知らせビラの表記の間違いを見つけてくれた総務担当のおばさんに校閲部長賞として2コをビニル袋に入れて差し上げた。
 「徒然草」にも持つべきものは「モノクルル友」とある。梨の効能は抜群。毎朝のように営繕の仕事絡みの電話を掛けてくる事務所のおばさんの口調が少し穏やかになった気がする。植栽のおばさんからは「とてもおいしかったです」とお礼を言われた。こういうモノは自分で食っちまうより、ひとさまに差し上げた方がはるかに喜ばれるもののようだ。栃木の宣伝にもなるし……。
 栃木の食べ物はおいしいのである。こういう標語もあった。「太陽さんさん 近くて新鮮 作り手真面目に 手塩に掛けてる トントン栃木の農畜産物」

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