歳を取ると進取の気性というのが失せ、何でも前の通りという行動パターンを取るようになる。自分がそうだから、一番よく分かる。例えば、日頃使う手帳のたぐい。俺はもう20年も同じタイプの手帳を使っている。10月に入る前に求めたのが、日々の日記に使っている能率手帳の縦型の「ウィック1」。背広の内ポケットに入れている黒革の手帳は同社の「ブイピー」という見開きマンスリーだ。 これは1日分が2.5a角で、慣れてしまうと、これ以外は使いようがない。ただ、この「ブイピー」はあまり置いている文具店がなく、おとといのバイトの帰り、丸善の丸の内店で入手した。で、東京駅地下のタバコの吸える喫茶店に入り、これじゃなくっちゃ、と手帳を開きながら何をしたかというと、新品の手帳に「B」マークを付けていった。 親しい人の誕生日を忘れないようにバースデーの頭文字の「B」を1年分記入したのだ。数えると54人に上った。10月10日の元体育の日のところは「Bナンコー」である。 かつてはベンツに乗っていたトレーダー兼不思議な画家のナンコーは、今、1年の3分の2をタイのチェンマイで、3分の1を日本で暮らしている。数日前「今、どこ?」と電話したら、「実家の奈良から国立に戻った」と言うので、きのうの誕生日は国立で昼飯を御馳走することにした。「祝ってくれるのはあんたぐらいになった。うれしいな」とのことである。 俺としてはちょっと豪華飯と思ったのだが、彼は行きつけの中華「香来」の餃子と麺でいいと言う。確かに「香来」の餃子は宇都宮の「正嗣」や「みんみん」などをしのいで、日本で2番目にうまい(一番は神田神保町の「三幸園」)のだ。ナンコーは焼き餃子に広東麺の小、俺は焼きに五目あんかけ焼きそば。食い終わって「タリーズ」の3階テラスで風に吹かれながら、来し方行く末について話した。 子宮がんにかかったことを昨年彼から聞いた共通の知人N嬢が治ってぴんぴんしているうれしいニュースもあった。なんでタイにいる奴の方が詳しいのだろう。彼はかの地でSNSをいろいろチェックしているらしい。俺はSNSとは無縁のガラケーだからその世界はなきに等しい。もっとも、ドコモから電話が掛かってきて「もう壊れても修理できません」というから、近々スマホに変える意向である。でも、俺のガラケー、一度も壊れたことがないんだよね。新しいスマホの機能に慣れることができるか、少々後ろ向きなのである |
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