台風19号人的被害は日を追うごとに増え、死者の数は70人を超えた。行方不明者も十数人に達している。その中で死者の数が一番多いのが俺の第二の故郷、福島県だ。死者27人! きのうの朝刊では、阿武隈川の氾濫で福島市と郡山市の中間にある、本宮町で体の不自由なお年寄りが逃げ遅れ何人も水死したとある。台風が首都圏に大被害を及ぼしそうという事前のアナウンスが東北や甲信越の人たちに「おらほは、大したことない」という先入観を与えたのではないか。 「本宮」で思い出すのは、入社4年目の”福島版ロッキード事件”といわれた県庁汚職事件だ。50年ぶりの県知事逮捕をA紙に抜かれまくったのだが、1976年7月30日、4選を果たしたばかりの県知事、木村守江が800万円収賄容疑で福島地検に出頭。朝5時過ぎの出頭写真を撮ったのはA紙の吉田慎一くんだけだった。この日正午過ぎ、宗像紀夫主任検事の取り調べを終え、地検から出てきた知事は、黒塗りの公用車で県庁に向かったが、吉田くんが「やったぁ!」と高くジャンプしたのをまだ鮮明に覚えている。 吉田くんは30日朝、ヘリコプターで特別輸送したA紙13版に「知事収賄容疑で取り調べ 高齢につき逮捕微妙」と書いていた。それが当たりだったのだ。A紙は知事を「在宅起訴」とヨンだが、それまでに農協五連会長、自民党県連幹事長、県総務部長、県生活環境部長らが軒並み逮捕されており、知事だけがお縄にならないのは許されないムードが強まった。 で、1週間後の8月6日、福島県警が知事を逮捕することになる。その出頭場所になったのが、規模の大きな福島署ではなく、4号国道を南に約20`の本宮警察署だった。前日の夜回りで各社は本宮署への木村出頭を割り、ウチは4、5人が本宮署へ出張った。俺は知事(1日にすでに辞任していた)が車から降りるところを写真に撮る役目。うまくシャッターを切り、警察署に入っていくところを見送って、振り返りニヤッと笑った(らしい)。 それをNHKのカメラが道路の反対側からキャッチしており、全国中継で流したらしい。大学バド部の仲間から「お前、笑ってたな」と後で言われた。「本宮」で思い出すのは43年前のあの前知事、木村守江逮捕なのだ。
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