スポーツの、食欲の、読書のといろいろな冠の付く秋だが、やっぱりふさわしいのは文化・芸術の秋ではなかろうか。その道を極めた人への表彰も秋に行われる。すでに発表が終わり表彰式を待つばかりのノーベル賞をはじめ、3日には文化勲章が授与される。こんな多額の賞金が出る大きな賞とはちょっと格が違うが、この秋、親しい知り合い二人がなかなかの賞を受けた。 一人は新聞社時代の同僚で今は石垣島に住む美人歌人の松村女史。もう一人は駆け出し福島支局時代から半世紀近い付き合いの浩ちゃんだ。松村さんは宮崎県などが勧進元の若山牧水賞、浩ちゃんはノンフィクション部門で福島県文学賞を受けた。これはまことにめでたい。 松村さんは、四半世紀前、俺が夕刊編集部のデスクをしていた時、俺の隣の席にいて、寺山修司も受賞した短歌研究新人賞を取り、ドロドロとした作風だったらちと困るなと思った記憶がある。未来の大女流歌人に向かって「お前の文章は硬すぎる。もっと頭を柔らかく……」などと恐ろしいことを言ったものだ。15年ほど前、新聞社を辞め作歌活動に専念。昨年はNHKの短歌教室の選者にもなった。辞めてからの彼女の文章は、自分を前面に出せるようになったためか、以前よりはるかに良いのである。牧水賞はことし上梓した第五歌集「光のアラベスク」が評価された。 浩ちゃんはことし72歳になる。福島市役所の枢要な部長を歴任し、今は仙台市に通い東日本大震災の被災地のまちおこしにも携わっている。福島県文学賞は浩ちゃんの地元の福島市飯坂町出身で、東京市長も務めた堀切善次郎の業績を400字詰め40枚にまとめたもの。郷土の先輩の仕事をしろしめたいという熱い思いが高く評価されたようだ。応募する前、原稿をちょっと読ませてもらったが、古稀を超えてもなお伝えたいという熱量の大きさに恐れ入りました。 浩ちゃんは俺の福島時代に、竹橋の新聞社がやっていた郷土提言賞にリンゴの町づくりをテーマに応募してもらい、県の最優秀賞をゲットしたことがあった。あの時の写真が今も手元にあるが、当時は髪がふさふさ。今回、地元の福島民報紙上に大きく掲載された彼の写真の頭部はかなり涼しげだった。人のことはあまり言えない俺だけど……。 |
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