「ヒマラヤの岩塩で食う衣かつぎ」 ヒマラヤと聞いて思い出すのはこの俳句である。2014年の私の読んだ本のベストテンの1位にした三田完の小説「俳魁」の中で主人公の小説家が俳句教室に通い、「衣かつぎ」の季題の時に主人公が特選に選んだ句だ。なかなかスケールが大きくてよいのでは。ヒマラヤは地球の隆起により、かつては海だったところが8000b級の山脈になった。だから、岩塩があっても不思議はない。 「俳魁」は主人公の母親と句会の主宰者とのただならぬ関係を追っていくストーリーだが、途中に出てくる句会の模様がなかなか面白く、この「岩塩」の句は頭に刻み込まれた。 山登りとは縁遠い俺だが、この秋、麻雀仲間のFくん(某ノンフィクション賞も受賞した経験のある書き手)が50日間もの休みを取り、ヒマラヤ・ダウラギリ登頂に挑んだ。彼の長期不在のおかげでなかなか中国語勉強会が成立しなかったのだ。その彼が先週帰国して、無事生還を祝す勉強会が開かれた。何でも無酸素で7300b地点までは登ったが、悪天候に阻まれ登頂は断念したのだとか。遭難しなかっただけでもよかったと思った。それにしてもエースがよく50日間も休めたものだ。 その勉強会の開始直前に、Fくんはザックから何やら取り出し、組閣幹事長Sくんと俺に「土産です」と硬いモノをくれた。7300bの高所から持ち帰った縦8a、横4a、厚さ4aほどの石である。何岩のかけらかは分からない。ヒマラヤの石だと思うと何やら効能はありそう。早速テレビの脇のゴルフの優勝カップなどが並んでいる棚の上に置くことにした。 ヒマラヤ仕込みの麻雀の腕の方は、まだ”低地順能”ができていないみたいで、Fくんの一人負け。次は石の運び賃くらいは負けてあげないとな。 |
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