隠居志願のつぶやき2017

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...... 2019年11月29日 の日記 ......
■ 恐るべし山口寿一   [ NO. 2019112901-1 ]
 1999年に刊行された「勝負の分かれ目」という本がある。筆者は当時文芸春秋の編集者をしていた下山進氏。ロイター、ブルームバーグ、日本経済新聞、時事通信社の4社について、インターネット以前の技術革新がメディアを変え、グローバル資本主義を成立させていった様子を活写した。当時新聞業界にいた俺にとってこの本は非常に面白く、タイトルは脳みそに刻み込まれた。
 先日、書店をのぞいていたら「2050年のメディア」というタイトルの分厚いハードカバーがあった。筆者はこの下山進氏。彼なら間違いなく面白いはずと、435ページの本を寝床で読みふけり、5日で読了した。下山氏は17年に、この十年間で日本の新聞部数が1000万部消え去り、売上も5000億円余り失われたことを知り、紙メディアの今について書こうとした。
 タイトルは2050年だが読売、日経、ヤフーが21世紀に入りデジタル化にどう取り組み、どう変わろうとしてきたかを豊富なインタビューを通して1冊にまとめた。その中で俺が一番注目したのが、大読売の山口寿一という社長の立ち居振る舞いである。ナベツネの後継者と思われた内山斉が失脚し、いま1979年入社で司法記者上がりの山口が読売を率いる。
 この本では法務室長として「清武の乱」を制圧した山口の徹底ぶりや、社長になってから日本新聞協会内のパワハラ問題を調査しこれを正した様が述べられている。少し盛っていると思われる部分もあるが、大読売の社長が口の重い協会職員の個々の事情聴取をするなど、なかなかできることではない。
 その山口率いる読売もデジタルの方向に一気に舵を切ることはできない。一方、日経はその扱う記事の特殊性から、デジタル化はしやすい。08年、日経の社長だった杉田亮毅は後任にパソコンに強いというだけで、誰も予想していなかった喜多恒雄を後任に据えた。紙の紙面からデジタル重視を示した人事だった。
 こんなオモロイことが詰まっている「2050年のメディア」。俺のようなOBが読むより、現役がぜひ手にしてほしいと思い、中国語研究仲間の竹橋の現役役員に貸してあげたら、ちょっとは読者の輪が広がっているみたい。ほんとに2050年に日本の新聞がどうなっているのか、誰も想像できない時代なのだ。

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