おととい夜のNHK「プロフェッショナル」でやった「ダリアの神様」にはたまげた。40歳の時に一念発起して、かつては地味な花のイメージが強かったダリアの育種に乗り出し、72歳のいま、日本で流通するダリアの7割を生み出しているという鷲沢幸治さんのお話。秋田市のダリア園というのに驚いたのである。 俺が秋田にいたのは95年から98年にかけて。そんなのあったかなと思って、ちょっとググったら、今は町村合併で秋田市になった雄和町のダリア園のことだった。ここなら1回訪れたことがある。でも当時はそんなに有名でもなく、名物おじさんにも行き会わなかった。 鷲沢氏がすごいのは、ふつう新品種は2つの花のおしべとめしべをこすり合わせてつくる「人工交配」で生み出すが、彼は蝶や蜂に任せる「虫媒」という手法を取ること。咲いてみるまではどんな花になるか分からない。これを72歳のいまも裸足ですたすたと園内を歩き回りながらやってのけるのだ。 ダリアに打ち込み過ぎて家庭を顧みなかったため、妻は認知症になってしまう。スーパーで惣菜を買って帰る日々。「あぶないので家に包丁はおいてねえんだ」と秋田弁で語る姿には考えさせられるものがあった。今、国際ダリア園は次男が園長となり、シーズンには全国から生産者、市場関係者がひっきりなしに訪れる。 秋田県は鷲沢が生み出したダリアを「NAMAHAGEダリア」として大々的に売り出し、出荷額は1億円を超すまでになった。深いワインレッドの「黒蝶」、上品な淡い紫色の「虹」など、これがダリアかと思えるほどの素晴らしい花だった。 たしかに俺がよく行くお花屋さんにも魅力的なダリアが増えている感じがする。あの秋田弁丸出しのおっちゃんが育てたのかと思うとなんだか楽しくなってくる。
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