昨年12月、駅伝に強いことで知られる某大に新設されたコミュニティ人間科学部に頼まれ、他人から話を引き出す極意をテーマに1時間の講義を行ったことがある。この新設学部のS学部長が高校の同期生で、長らく東大の教授を務めてきたが、十年ほど前某大にスカウトされた。Sくんとは高校時代さほど交流があったわけではないが、秋田支局長をしていた97年だったか、社会学会が秋田で開かれた折、一献傾けたことがあった。以来、賀状の交換だけは続けてきた。 昨年10月、講師依頼の電話が掛かってきて22年ぶりに再会し「記者の経験を基に、1年生にいい話を聞かせてくれ。俺の顔をつぶすなよ」とおそろしいことをのたもうた。ふた昔前は髪はふさふさだったのに、かなりツルツルになっていた。まぁ、そんなのチョロいもんだと安請け合いしたが、学生相手の文章教室の経験はあるが、この手の授業をするのは初めて。講義録を京大式カード24枚にまとめるのに7〜8時間かかった。幸い、受講者250人のうち寝ている奴はいなかったが、銀座のママが考案した「おじさんを転がすサシスセソ」まで伝授する型破りの講義になった。 先週、マンション管理組合の総会準備作業をしていたら、Sくんから電話が掛かってきて「あのテーマで授業をもう一度やってくれないか?ただ、大学は暮れまでずっとオンライン授業なので、あらかじめビデオに収録する形でやりたい」と言う。こっちは素浪人で、時間は有り余るほどあるから、臨時収入にもなると二つ返事で引き受けたが、Sくんの言うことが振るっている。 「お前が一人でしゃべると危険だから、俺がインタビューする形で収録する」。前回紹介した「おじさんを転がすサシスセソ」は受講していた真面目なセンセイ方にも受けたと思うが、あれをオンラインでやられたら、神聖な学問の府ではまずいのだろうな。しぶとく取っておいた京大式カード24枚を読み返したのだが、タイムリーな話題も盛り込み、象牙の塔に籠ったセンセではできない、なかなかの内容だったと自画自賛したのでした。 |
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