拙宅にはテレビの録画装置がない。見たい番組があったら(そうないのが困りものだが)、その時間にテレビの前で正座して待つことになる。敗戦から75年となるこの前の15日夜、NHKで特集ドラマ「太陽の子」(灰谷健次郎に同名の作品があったような)が放送された。第二次世界大戦時に京大で「原子核爆弾」の研究に携わった学生とその家族の物語である。 主演の物理学徒、石村修(柳楽優弥)の弟役、裕之を7月に自殺した三浦春馬が演じている。三浦の突然の自殺を知ってNHKは大いにうろたえたと思う。しかし、金と時間を掛けた特別ドラマとあって、終わりに「ご冥福を祈る」とのテロップを入れるだけで、放送に踏み切った。このドラマを俺は中国語学習と重なったため、リアルタイムで見ることが出来なかった。 きのうの夜中、このドラマの再放送があった。昼間の芝刈りでヨレヨレだったのだが、三浦の最後の演技は見ておかねばと正座してテレビに見入った。戦時中のドラマだけあって、丸刈りにした柳楽と春馬。強制疎開されたため、石村家に父親(山本晋也が絶妙な演技)と寄宿することになった幼馴染の世津(有村架純)がなかなかの熱演だった。「ひよっこ」で北茨城の田舎娘を演じたことのある有村はモンペ姿がよく似合っていた。 画面では巨大な実験装置を実際に造り、研究を主導した教授(國村隼)が「人間はエネルギー資源を求めて戦争をする。われわれが核分裂をコントロールしてそのエネルギーを自由に使うことができるようになったら、人間のエネルギー問題は永久に解決するはずや。そしたら戦争はなくなる。これは夢物語か?科学者が夢語らんでどうする」とさらりと言ってのける。そして特攻で戦死した裕之を悼む母親役、田中裕子の演技は圧巻だった。紗が掛かったような画面。修にウランを提供する職人、イッセー尾形のセリフにも打たれた。 この重厚なドラマなのだから、若い助演男優の自殺など、棚に上げて放送してもかまわないと考えたNHKの判断は間違ってはいないと思う。沢尻エリカとかピエール瀧のように、犯罪を犯したわけじゃないんだから。特攻が迫っている春馬くん。「怖い」というセリフがなかなかよかった。死ななくてもよかったのにな。 |
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