民放はあまり見ないのでCMの世界に暗くなっているのだが、たまにJRに乗って車内で放映される龍角散の「のど飴」のコマーシャルに佐竹敬久(のりひさ)秋田県知事(72)が登場すると「あの殿様がCMにか」という思いを深くする。このCM、龍角散に使われているハーブを秋田県美郷町で生産している縁で、知事が秋田の宣伝になればと出演しているもの。 俺が秋田の支局長をしていた時、佐竹さんは官々接待問題で佐々木喜久治知事が退陣し、その出直し知事選(97年4月)に自民などの支持で県総務部次長を辞めて49歳で出馬したのだった。江戸時代、秋田を治めた佐竹藩の末裔という家柄。水戸から秋田に移封された佐竹家が、美女をごっそり秋田に連れてきたため、秋田に美人が多く、水戸に美女なしという伝説もある。 その時の知事選では横手市長だった寺田典城(すけしろ)氏(のちの参議院議員)が反自民勢力を集め初当選を果たした。その時の選挙で忘れられないのが、知事選で敗れた翌日の月曜日朝、佐竹さんが秋田支局を訪れ「いろいろお騒がせしました」とあいさつしに来たことだ。選挙で負けたばかりの候補者が全国紙の支局を訪問するなんて聞いたことがない。 で、佐竹陣営が選挙終盤、佐竹家の家紋の入った青い大きな旗を選挙カーの窓から振り回して遊説した点について「あの旗はまずかったんじゃないですか」と申し上げた記憶がある。しかし、この人はちょっと他の政治家とは違うな、という印象を持った。 その後、佐竹氏は2001年に秋田市長に就任し、二期務めたあと、09年に知事に初当選。現在三期目である。イージス・アショア問題では防衛庁長官に食い下がる映像もあった。CMに出てくる秋田なまりが少々なつかしい。そういえば、俺が秋田にいた当時「秋田、花まる!」という標語があったが、平仮名にすると「あきたはなまる」のだった。
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