八王子で都内版向け記事をせっせと書いていた40年前は、驚くほど文章がスイスイ書けた。今でもよく覚えているのが、学生が撮った写真に25行ほどの文章を付ける「ヤングポスト」欄の原稿(1981・8・15付)。女子学生が斜めの手すりの上に立って、両手を左右に広げて手すりを降りようとしている写真に付けたもので、15分ぐらいでチャッチャッと書いた。 「文庫は読むけど角川映画は敬遠。ボーイフレンドは欲しいけど、一緒にお茶を飲んだだけで恋人然とする子は願い下げ。ファッション雑誌は読むけど、ブランドにはこだわらない。(中略)8・6、8・9に黙とうはしないけど戦争はイヤ。終戦記念日というより、ダイちゃんの明日の投球が気にかかる。人生楽しんじゃうゾ。これ、私のバランス感覚」。ダイちゃんというのは当時絶大な人気を誇った早実の2年生エース、荒木大輔のことだ。 コラムで敬遠と書いた角川春樹監督の映画「みをつくし料理帖」を封切り日の先週金曜日、立川で観た。巣籠り中にNHKBSで「ゴッドファーザー」とか「ダーティーハリー」とか、いつになく映画をたくさん観たが、映画館で鑑賞するのは1月以来10ヵ月ぶりだ。 この高田郁(かおる)原作の「みをつくし料理帖」(ハルキ文庫全10巻)は、大阪で大水で二親をなくした澪が江戸に出て、一丁前の料理人になるというストーリー。やはり両親を亡くした幼馴染の野江が吉原で評判の朝日太夫となり、直接には会えない二人だが、料理を介した心の通じ合いが泣かせるお話。 数年前NHKで10回連続のドラマ化された時は、澪役の黒木華が「下がり眉」の愛称にぴったりだった。映画では朝ドラ「ひよっこ」などでいい味を出していた松本穂香が演じる。黒木華と比べるのは酷か。テレビで小日向文世がやったメシどころ「つる家」の親父は石坂浩二。これが割とよかった。朝日太夫と澪とのつなぎをやる板前の又次を中村獅童。これがいなせで身のこなしが素晴らしく、さすが歌舞伎役者と思わせた。 俺は原作もきっちり読み、テレビも正座して見たから、あのストーリーをどう二時間の映画にまとめるのかと思っていたが、なかなかいい出来ではあった。でも、ふつうは求めるパンフレットに手を出さなかったのは、懐具合が寂しかったからだけではないね。テレビが良すぎたのかな。 × × × × 今週の拙宅の花は赤黒いダリア「ナマハゲノワール」と黄色のバラ「ソラーレ」、それに濃いピンクのカーネーション「ファビュラス」です。Content-Disposition: form-data; name="image"
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