きのうは85歳のおばあちゃんとケーキ屋でデートした。これまで80歳の某省事務次官の未亡人とディナーを食べたことはあるが、女性のサシの相手としては史上最高齢である。集団交際もいいけど、サシの勝負は第一線の記者時代から好んできた。秘密が漏れたら相手がペラペラしゃべったと特定できるから、もう大事な話はしなければいい。事は密なるをもって成り、語り漏るるをもって破れるのである。 と言っても、85歳のシャキシャキおばあちゃんとの密会は、そんな物騒なものではない。マンション管理組合の理事不在の号棟で、このおばあちゃんの日ごろの付き合いの深さにより、理事になぞかつて拒絶されたものには絶対にならないと、かたくなだった75歳のおじさんの心を解きほぐし、理事就任への道を開いてくれたことへのお礼のケーキ屋デートである。 駅前のド・トールでは人目に付くので、昨年開拓した愛想のいいお姉ちゃん一人でやっているケーキ屋さんが密会場所。「お昼を食べたばかりでお腹いっぱい」というので、店ではコーヒーだけにし、好きだというチーズケーキとモンブラン(これは90歳の旦那様用)は持ち帰ってもらった。 「お蔭さまで居住者による過半数の同意書面を集めることができました」と頭を下げると、「よかったわねぇ。あたしもこの理事不在が気になってて、なんとかせにゃと思ってました」と責任感あふれる高齢者なのだった。2月の暴走老人の立候補に始まり、この老人を排除できないかと弁護士を正式に頼んで、30回は理事による対策会議を重ねた裏話をすると、「そんなことがあったの」。 雑談するうち、おばあちゃんが5年前、55歳の長男をがんで亡くし、気がふれてしまったその妻を2年間自宅で面倒を見、妻の両親の御弔いも出してあげたということを知った。こういう世話好きな方だからこそ、75歳老人の心を動かせたのだと感じ入ったのである。逆縁となった長男の忘れ形見が今年、有名大企業に就職したことを語るおばあちゃんは、ほんとにうれしそうで、いい話を聞かせてもらいました。 |
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