文弱の徒なもので、本が手放せない。街へ出た時は、つとめて書店をのぞくようにしているのだが、その棚に読みたいと思える本がない場合、恐怖を感じる。生きるエネルギーが落ちている時、世の中への好奇心が薄れている時などがそんな状態で、先月上旬がちょっとそんな感じだった。 幸い、半ば過ぎから、書店に入ると背表紙の文字が向こうから目に飛び込んでくるようになり、財布の許す限り入手した。著者も取り上げる分野もバラバラで、いったい俺の脳みその具合はどうなっているのか、いぶかるくらい。 師走に入っても、次々に「これは」という本のタイトルが目に飛び込んできて、幸せな気分。こういう時はとりあえず買ってしまおう。と、いうことで11月に読んだ本。 柚月裕子著「盤上の向日葵」。この将棋の駒をめぐるミステリーはなかなか面白かった。NHKのBSでドラマの再放送をやっており、ちょっと観たら旅打ちの真剣士役を竹中直人が演じていて、こりゃピッタシだった。18年の本屋大賞の2位となった本で、この時の大賞は「かがみの孤城」。こっちの方が大賞でもよかったと思えた。 加藤陽子著「戦争まで」。日本学術会議のメンバーに選ばれなかった加藤さんの本。「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」で感心し、ずっと積ん読状態だった本。精緻な内容で読むのに時間がかかり、11月の冊数がことし一番少なくなった。 谷沢永一著「嫉妬の正体」。人間通で知られる谷沢氏の復刻新書。勉強になります。月村了衛著「白日」。次女が編集を担当したエンタテインメントで、月村氏の著作を手にするのは初めて。なかなか読みやすい。週刊現代の書評欄に大きく取り上げられた。陣内秀信著「水都東京」。家康が来る前から江戸は水運が盛んで、計画的に堀などを造っていった。神田川の源流、井の頭池や国分寺崖線下の湧水なども取り上げており、興味をそそられた。 丹羽宇一郎著「部長って何だ!」この手のビジネス書は読まないことにしているのだが、伊藤忠商事の社長会長を務めた丹羽さんは特別。伊藤忠はマスコミの入社試験にことごとく落ちた俺を採用してくれた会社で、政策情報誌時代に丹羽さんのロングインタビューをしたこともあるのだ。部下を育てる要諦として「認めて、任せて、褒める」とあった。 |
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