きのうの夜はNHKのBSで映画「鉄道員(ぽっぽや)」を観た。1999年制作のこの映画。浅田次郎の原作を基に降旗康男監督、高倉健主演でつくられた。俺はたしか封切り直後に観て、冬の北海道、炭鉱の閉山で廃線の運命にある幌舞駅の駅長としてぽっぽや人生を終える高倉の名演にしびれ、その直後長女を誘って観て、同じ場面で涙した。そして次女とも三回目に観て、やはり泣いた。あれから20年余り。やっぱり泣けてきた。 雪のホームに「出発進行!」「信号よし!」と立つ幌舞駅長。その後ろ姿から無限の悲しみを伝えられるのは健さんくらいしかいないのではないか。 蒸気機関車の運転手としてぽっぽや人生を始めた高倉扮する佐藤乙松。その相棒を務める仙吉役、小林稔待の演技もすばらしい。終生の友、仙ちゃんは定年後の再就職先も決まっていて「お前のことが心配だ」とおせち料理を持って、一夜幌舞駅長の官舎で酒を飲む。定年後は一緒にホテルマンとして働こうと促すが「俺は鉄道以外はなんもできねぇ」とつれない乙松。 乙松は結婚17年目にして妻(大竹しのぶ=これも名演)との間にできた娘、雪子を生後間もなく失い、妻も病気で亡くなる。乙松は駅長の交代要員の手配がつかず、妻の死に目にも会えなかった。それを仙ちゃんの妻(今は亡き田中好子)が「なして?」と責める。健さんの頬を伝う涙。泣けるねぇ。 仙ちゃんが泊まった夜、駅長室に深夜小さな女の子が訪れる。人形を駅長室に忘れていくのだが、その人形は乙松が赤ん坊の雪子にプレゼントし、妻が赤いちゃんちゃんこを着せ、雪子の棺の中に納めたものだった。次の夜人形を取りに来るのが高校生となりセーラー服姿の広末涼子。キラキラしてオーラがある。鉄道研究会に入っているという涼子は乙松に手調理を振る舞い「あたし、ぽっぽやと結婚したいの」と話す。「うめぇなぁ」と感極まる健さん。 亡くなった雪子が父を思い訪ねてきたのだと分かった乙松は「俺は幸せだった」とうめく。そこは泣けてくるシーン。雪子がふっと消えてしまった次の日か、ラッセル車を待つホームで乙松は倒れ、帰らぬ人となるのだ。物語には流れの炭鉱労働者として、飲み屋でケンカし、無念さからテーブルに額を何度も打ち付ける志村けんの怪演もあり、ああこんなシーンだったと20年前をクッキリ思い出した。 いい映画って、何年たっても古くはならないし、人の感情はそう変わらないと思える4回目の名画鑑賞だったのである。 × × × × 今週の拙宅の花は、濃いピンクの大輪のバラ「ピンクレディブル」と薄いピンクのバラ「ヴェラヴィータ」、それに臙脂色のマム「マルベリー」です。 |
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